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2012.06/11(Mon)

近松物語

拍子木の澄んだ音が映画の開幕を告げる。原作は近松門左衛門の『大経師昔暦』。近松門左衛門と言ったら『曽根崎心中』が頭に浮かぶ。始まって早々、不義のかどで引き回され、刑場へ向う見知らぬ男女の姿が映し出される・・・結末を暗示するショットだ。うーん、後味悪そうだなぁ。どんな理屈をつけたとしても、主人公が磔になるのは辛いし怖い。気は進まなかったが、とりあえず見てみることにした。

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京烏丸四条に店を構える大経師以春(進藤英太郎)は歴の発行権を独占し、名字帯刀を許されている。商売は繁盛しているのだろう、店の者は、皆、忙しそうに立ち回っている。誰ひとりとして同じ動きをしていない。以春にはおさん(香川京子)という美しい妻がいるが、店の女中に手を出す浮気者である。権威をみせつけるために腰にさした刀が、居心地悪そうに帯にぶら下がっている。品位のない男だ。おさんとは年齢が離れており、金で買った結婚であることは、絵面を見れば一目瞭然。それが証拠に、おさんの元へ実家の母が金の無心にくる。だが、以春は「金の無心なら断る」とおさんへ言い渡すのだった。困ったおさんは手代の茂兵衛(長谷川一夫)に相談する。それが悲劇の始まりだった。

おせんと茂兵衛は、互いの気持ちを知り、一気に愛の炎を燃え上がらせる。だが、封建社会にあっては禁断の愛だ。ふたりの純真さと、以春の欲深さを並列に描くことによって、おせんと茂兵衛の愛を際立たせている。また、おせんの兄というのが似ても焼いても食えないヤツで、彼の無神経な言動は観客に腹立たしさを植え付け、不義のふたりへの同情心を煽る。おせんの母、茂兵衛の父も、身を呈してまで子供を守ろうとはしなかった。おせんと茂兵衛は孤立した世界で、愛にすがるしかない状況に追い込まれていく。

溝口監督は音を大切にする監督なのだろう。緊張感や不安感を音の強弱と高低で表現している。おせんと茂兵衛が愛を深めるシーンでは、情感たっぷりに、笛の音が響く。水の音、風の音もゆるがせにすることなく丁寧に作りこみ、登場人物の心情を反映させている。宮川一夫のカメラワークも見事である。白と黒のコントラストが映画にメリハリをつけた。セットは細部に至るまで寸分たがわず当時を再現している。長谷川一夫一のねっとりとした演技は文句のつけようがない。一流の技術と一流の役者が作りあげた一流の映画である。だが、予想通りのラストに心が曇った。死への道行きを甘美なクライマックスとして描いているのだろうが、磔はちょっと。。。。雨月物語よりもずっと怖い映画。
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タグ : 溝口健二

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