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野良犬
2008-05-16 Fri 12:46
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監督:黒澤明
脚本: 黒澤明、菊島隆三
撮影: 中井朝一
美術: 松山崇
編集: 後藤敏男
振付: 縣洋二
音楽: 早坂文雄
助監督: 本多猪四郎 、今泉善珠
上映時間 :122分、製作国:日本
公開:1949
出演: 三船敏郎 志村喬 淡路恵子 三好栄子 千石規子 河村黎吉 東野英治郎 永田靖 木村功


拳銃を盗まれた新米刑事(三船敏郎)が先輩刑事(志村喬)とともに犯人を追い詰めていくサスペンスです。冒頭にはゼエゼエと舌を出して喘いでいる野良犬のアップ。事件の起こった日の暑さと、臭覚鋭く犯人の痕跡を追う刑事を連想させるショットです。暑さは犯罪を誘発する一因なのでしょうかねぇ。「狼たちの午後」(1975)でも、事件の舞台となったブルックリンの暑さが強調されていました。

暑い夏の日であることは、人々がハンカチで額の汗を拭き、団扇で仰ぐ姿で伝わってきます。それに加えて、夏の射すような光線!人、樹木、建物の影の短さに、真上から照りつける太陽をヒシヒシと感じます。舗装されていない道路に立つ土ぼこりからは、カンカン照りの日々が続いている事が伺われます。これが黒澤映画の表現能力なのですね。

三船が復員兵の格好で昼の闇市、夜の酒場をうろつくシーンに、日本の戦後の混沌を見ました。狭い路地に溢れる人々、タバコをくゆらす女、戦争孤児と思われる子供たち、道端で営業を行なっている散髪屋、屋台でスイトンを食べる人、途方にくれたように座り込んでいる復員兵、スリと警官の捕り物・・・・・。それにしても、人が多い。東京は焼け野原と化したので、路上生活者が多かったのでしょうか。こんな状態から復興を果たし、経済大国として先進国の仲間入りをした当時の日本人のバイタリティには脱帽です。

ピストル強盗の犯人のひとりに目星をつけ、後楽園球場にいると思われるホンダ(タチバナ)を捜す三船と志村喬 の刑事コンビ。南海対巨人の試合を見守る5万人の観衆。当時は1リーグ制だったのですよね。川上がおります。(今もお元気なようでなにより)よ〜く見ると、バッターがヘルメットを被っていません。危ないですね〜。まっ、川上クラスになると、ボールが止まって見えたそうですから、問題なかったのでしょう(笑)。犯人を逮捕する際、球場がパニックに陥らないようにと、球場アナウンスが「上野のタチバナさん、大至急、正面入り口まで」と犯人を名指しで呼び出します。それに応える犯人はちょっと、オツムが弱いのかしら。こんな逮捕の仕方もあるのですね(笑)。

ホンダの逮捕によって、犯人グループの実態が明らかになります。リーダー格の遊佐(木村功)が姿を現すのは最後の最後。遊佐と三船の対決はセリフを排除した緊迫感あるシーンでした。ふたりの格闘をよそに、近くの館でピアノを弾いている令嬢。人生いろいろ。。。。戦争により何もかも失くした人間もいれば、戦後のどさくさに乗じて財を成した者、何ら変わることなく暮らす者もいたでしょう。

「世の中には悪人はいない、悪い環境があるだけだ」 戦場を体験した刑事の三船は、人間というものが、ごく簡単な理由でケダモノになることを知っています。戦後まもなくの貧しさの中、社会的病巣の深部で、もがき苦しむ遊佐に同情をみせつつも、悪に身を置く者を執拗に追いかけます。一匹の狂犬を野放しにすれば、病巣が広がってしまうから・・・。冒頭の野良犬は、狂犬的な生き方しか出来なかった人々が喘ぐ様かもしれません。
別窓 | 黒澤映画 | コメント:4 | トラックバック:1 |
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この記事のコメント
盛りだくさんの内容ですよね。
特に好きなシーケンスはスリ係りの刑事、河村さんと
スリの岸輝子さんのところです。二人とも芝居が自然で
ウマイですねー。河村黎吉さんには脱帽です。
「後生がわるいぜ」というセリフ。おもしろいですね。
千石さんが取調室でタバコ吸うシーンもいいですねー。
マーちゃんご指摘の早朝ピアノを弾いているエエトコのお嬢さん。
天国と地獄がここで表現されてますね。
あのシーンのクーラウのハ長調のソナタ聞くと、私、いつも涙出てくるの。
志村さんの家の描写もいいな。
いいところいっぱい。
また観たくなっちゃった。

2008-05-16 Fri 17:43 | URL | スタンリー #-[ 内容変更] | top↑
スタンリーさんへ
この映画は、かなり面白かったですよ。社会派映画だけど娯楽要素もありましたね。
スリ係りの刑事さん、開襟シャツ姿と扇子がお似合いでした。
そうそう、スリのお銀との掛け合いが可笑しかったですね。
「おや、市川さん、もう死んだかと思っていたよ。」とか言ってましたね(笑)。
お銀という名前が、いかにもスリっぽいです。
取調室でタバコを吸っているのが千石さんですよね?
あの吸い方・・・あんなに吸い込まなくても(笑)。体に悪そうでした。
志村喬さんとアイスキャンディを食べてるシーンも良かったですね。
暑さでダラ〜としている感じがよく出ていました。
エエトコのお嬢さんが弾いているのはクーラウのハ長調のソナタですか!
さすが、スタンリーさん、お詳しいですねぇ。
あのお嬢さん、物音にチラリと反応したけど、そのままピアノを続けましたね。
近くで死闘が繰り広げられていても、お金持ちは「そんなの関係ね〜」なのでしょうか。
志村さんの家では、お酒のツマミがかぼちゃ。時代を感じます。
ほんと、いいところがテンコモリでした♪
2008-05-16 Fri 19:54 | URL | マーちゃん #jIgFQiZc[ 内容変更] | top↑
おはようございます。
この間、スタンリーさんも賞賛されて居られましたが、マーちゃんのレビュー、風格が漂っていますね。素直に読める素晴らしさがあります。
この映画について、コメントさしあげようと思いましたが、話そうとする内容が、TBさせて頂きました中に総て書いてありました。
ということで、これにて失礼します。
追伸:来週は黒澤映画について何か書きたいと思っています。
2008-05-17 Sat 08:30 | URL | アスカパパ #xq6o7d/.[ 内容変更] | top↑
アスカパパさんへ
おはようございます。
お褒め下さりありがとうございます。でも、まだまだダメなところばかりです。余分な修飾語は使わないように心がけているのですが、ついつい使ってしまいますし・・・。

お忙しいのに、コメントを寄せていただきまして感謝しております。来週はお時間が取れそうですか。アスカパパさんやスタンリーさんは、黒澤作品に精通してらっしゃるので、教えていただくことばかりです。私は今までの放送分を合わせて、やっと13本です(汗)。「野良犬」は今までに観た中では「影武者」と並んでベストになりました。魅力的な登場人物がたくさん出てきますものね。戦後は皆、生きるのに必死だったということがよくわかりました。街の風景はドキュメンタリーのようです。当時の人々の逞しさが伝わってきます。戦後の日本はゼロからの出発だったのですねぇ。東京オリンピックの時には新幹線や首都高速を完成させたのですから、あれよあれよと復興だったのでしょう。この映画は、戦後の様子を伝える資料としても価値があると思いました。
2008-05-17 Sat 10:25 | URL | マーちゃん #jIgFQiZc[ 内容変更] | top↑
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野良犬
 こんな暑い映画は見たことがない。トップカットで野良犬が喘いている。エアコンの無い時代だ。扇子、扇風機、タオル、団扇、ハンカチが大活躍する。  舞台の幕が下りて楽屋に急ぐ踊り子の脚を、梯子階段の裏から捕らえるカメラとは別に、汗の肢体を横たえる踊り子を写... …
2008-05-17 Sat 08:20 アスカ・スタジオ
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