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2009.02/23(Mon)

戦争映画あれこれ

私は明治の軍人・乃木希典ファンではない。そう思うようになったのは『坂の上の雲』に因るところが大きい。著者の司馬遼太郎さんは随所で乃木批判を繰り広げている。それだけでは気が済まなかったのか『殉死』という本まで書いて乃木の精神体質を批難している。『坂の上の雲』の執筆にあたって日露戦争を徹底的に調べ、その上で無能な軍人と断言した氏の言葉を読者は信じてしまう。真実は別の所にあるのかもしれないのに・・・・。司馬さんは『殉死』の中で乃木について「大正期の文士がひどく毛嫌いしたような、あのような積極的な嫌悪はない。ただ、このひとが自分の伯父かなにかであれば、閉口してその家は敬遠したにちがいない」と書いている。

先日、東郷神社に行った。乃木神社も近くにあるのだが足が向かなかった。
だって・・・・・。
tougou-1.jpg

と言うことで、本題に入ります。

【二百三高地】(80)
この映画の下地は『坂の上の雲』の「旅順」~「二〇三高地」の章だろうな。ただし、小説には小賀(あおい輝彦)と佐知(夏目雅子)の恋愛話なんて出てこない。戦争映画に恋愛話は挿入してほしくないなぁ。戦争の悲劇性を強め感傷的にする狙いだろうが稚拙な演出だと思う。戦争が生んだ悲恋ならば『ひまわり』のようなアプローチをしてほしい。乃木役は仲代達矢。児玉源太郎は丹波哲郎が演じている。実際の児玉は身長が160センチなかったそうだから、もう少し小柄な役者さんの方が良いのではないかしら。でも、小柄で威厳がある役者さんって思い浮かばない・・・・う~ん、池乃めだかという訳にはいかないし(汗)。

映画は日露戦争の旅順攻防戦を描いている。海軍からは防御が手薄な二百三高地の攻略が提案されるが、乃木はもっとも強靭な盤竜山と東鶏冠山(ひがしけいかんざん)の攻撃に固執する。結果、日本軍は死体の山を築くことになる。しかし、その後も、乃木と参謀長・伊地知は執拗に正面攻撃をしかけてはその都度、ロシア軍にはね返されてしまう。攻撃目標を二百三高地に変更し、どうにか旅順を制圧したものの、日本陸軍にとって大きな犠牲を伴った勝利であった。乃木は人格者ではあるが戦争においては暗愚だ。高潔さだけで勝利は呼び込めない。乃木式軍人精神が陸軍から合理的な思考を奪ったと思うと腹立たしい。死んでいった名もない兵士たちがあまりにも悲しすぎる・・・・・と、映画だけを見れば、このような感想になる。しかし、映画は映画であって、史実と異なる部分もある。映画や小説では、乃木は策なく総攻撃を3回行ったとしているが、力攻めを行ったのは最初の1回のみで、後の2回は策を弄したようだ。司馬さんがおっしゃるほど、無能な人ではなかったのかも?

【日本海大海戦 海ゆかば】(83)
日露戦争の日本海海戦を描いた映画。監督は『二百三高地』の舛田利雄。東郷平八郎提督を三船敏郎が演じている。乃木が生涯洞窟のなかで灯をともしていたような、そういう数奇なにおいの人物(司馬さん談)なのに対し、東郷さんは薩摩人らしい堂々たる精神の持ち主。こういう人は運を招き優れた人を引き寄せる。乃木の参謀が伊地知だったのに対し、東郷提督には秋山真之という天才参謀を得た。映画では横内正が秋山さんを演じている。う~ん、ちょっとイメージが違う。横内さんは水戸黄門の渥美格之進でしょ(笑)。三船は【日本海大海戦】でも東郷提督を演じている。こちらの映画の方は音楽が快活で海軍らしいかな?

<東郷神社境内にある「海軍特年兵の碑」
gyorai.jpg
模型の説明文によると、実魚雷の寸法は
巡洋艦・駆逐艦用 径61㎝ 長さ8.5m / 潜水艦用 径53㎝ 長さ7.2m / 航空機用 径45㎝ 長さ5.7m

【連合艦隊司令長官 山本五十六】(68)
山本五十六を演じているのは三船敏郎。日露戦争の雄・東郷平八郎や乃木希典よりも、太平洋戦争時の山本長官の方が知名度が高い。しかし彼はヒーローなのだろうか。アメリカの国情に明るく、その軍事力の強大さを知る山本は日本の敗戦を確信していた。日・独・伊の三国同盟に猛烈に反対し、対米開戦を避けたかった山本長官のハワイ奇襲は解せない。成功すればアメリカの反日意識を煽るし、失敗すれば日本軍の士気が下がる。それにアメリカ空母は無傷であったのだから、手放しに成功したとは言えないだろう。これ以降の戦いが航空戦になったことも日本にとっては痛手だ。一か八かの奇襲は長官のスタンドプレーのような気がする。

映画の冒頭、山本が小さな手漕ぎ船のへさきに両手をついて逆立ちしている。実際、これは山本の得意の芸であった。阿川弘之著「山本五十六」によれば、郵船諏訪丸で初めて渡米する時も、山本はローリングしている船のサロンの手すりで逆立ちをして見せたりしていたそうだ。映画は山本五十六を誰にも親しまれ、敬愛された人物として描いている。彼は偶像視されているのではなかろうか・・・・。

line088.gif

とまぁ、最近観た映画の感想です。『日本のいちばん長い日』(67)を観た後なので、少々評価は辛めかもしれません。日露戦争を題材にしたものでは『日本海大海戦』(69)、真珠湾攻撃は『トラ・トラ・トラ』(70)が良く出来た映画ですね。太平洋戦争を扱った映画は、戦争を知る世代が制作したものの方が優れているように私は感じます。戦後育ちのTV世代が作ると、装飾した甘美なものになってしまう傾向があるように思うのですが・・・・。

テーマ : 日本映画 - ジャンル : 映画

タグ : 映画感想 戦争映画 三船敏郎

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Comment

●三つの映画の総評

感服します。戦争映画というと必ず一兵士と故郷のいいなずけ、婚約者との話しが出できて、私も昔からワンパターンの脚本だなと感じます。こいうことはむしろ戦時中に製作された映画のほうがかえってドライで抑えられていてスッキリしています。
乃木さんの旅順の作戦が伊地知参謀の入れ知恵とはいえ、いまだ理解不能ですね。機関銃やトーチカに対して肉弾戦を繰り返すということ。これは太平洋戦争でも懲りずに繰り返されます。精神力があれば敵の弾は当らないという。
「殉死」もぜひ読んでみたいですね。
山本五十六も運が良かっただけかもしれません。ねっからのバクチ討ちですから。ミッドウェーではスッテンテンになりましたね。
スタンリーメタボリック | 2009.02.23(月) 20:12 | URL | コメント編集

●スタンリーさんへ

戦争映画の感想を書き出すと、やたら長くなってしまうので3本まとめてコンパクトにしようと思ったのですが、やっぱりダラダラ書いてしまいました(汗)。
一兵士と故郷のいいなずけ話は私もうんざりです。戦争活劇だったら、恋愛や家族の話が挿入されていても反発しないのですが、実際にあった合戦を取り上げた映画では、過度な演出をしてほしくないです。ドライに描かれている方がいいですよね。
乃木さんの軍人精神が陸軍に脈々と受け継がれていったような気がしませんか?陸軍はやたら、精神論をふりかざしますもの。乃木さんは弾に当たってもいい思っていた風があるのに、絶対当たらなかったらしいですね。死んでいくのは一兵士ばかり・・・・。スタンリーさんのおっしゃる通り、太平洋戦争でも銃剣突撃していますものね。
伊地知参謀は「坂の上の雲」では大バカ者扱いされてましたね。戦闘の実質的な指揮者は参謀ですから、乃木さんは気の毒だったかもしれません。
「殉死」は司馬作品の中では極端に短い小説です。文学作品の題材に乃木を取り上げたというより、「坂の上の雲」で言い足りなかった乃木さんの悪口を付け足した・・・みたいな(笑)。司馬さんいわく、乃木は寝る時も軍服をぬがずに布団に入っていたそうです。そういう精神は理解不能ですよ。
山本五十六はカードや将棋やブリッジが大好きだったそうですね。運がつきたのか、ミッドウェイは悪い方へ悪い方へと事が進んでしまいました。
マーちゃん | 2009.02.23(月) 22:13 | URL | コメント編集

●「坂の上の雲」に隠された歴史の真実

という准教授の書いた本を読んでいます。
彼によると司馬は小説家であり、歴史家ではないので、あの小説にある旅順攻撃の方法を愚策であるという書き方は、取材不足で私情が入った根拠のないものであり、乃木を愚将と決め付けるのも間違っていると言っています。
ただし、この人の書き方も、司馬に対して少し冷静さを欠いているきらいがあります。
もし未読でしたら一読をお勧めします。
スタンリーメタボリック | 2009.03.02(月) 09:51 | URL | コメント編集

●スタンリーさんへ

まぁ~!奇遇な!!!実は昨日、乃木神社へ行ってきました。(写真などは後日アップしますね)。神社では乃木さんのことを書いた本が何種類か販売されていたのですが、右翼系の方が書いた本ばかりで、これじゃダメだなぁと思いつつ、中央乃木会が発行している「名将 乃木希典」副題が「司馬遼太郎の誤りを正す」というのを購入したのですよ!でも、乃木会の発行図書ですから、乃木さんを讃えることしか書いていないのだろうなぁと思っていたところに、スタンリーさんの情報!ありがとうございます。歴史を知りたい時は小説に頼ってはいけないのですよね~。司馬さんは戦国時代を題材にした小説も多く残していらっしゃいますが、これがウソばかりなのですよ(汗)。明治時代ならば、戦国期を題材にしたものよりかは、史実に近いことを書いているのかと思っていたのですが、どうも、「旅順攻撃」に関しては取材不足があるのではないかなぁと薄々感じていました!それで、詳しく知りたいと思っていたのです。大学の先生が書いた本で良い本はないなと探していたので、さっそく、「坂の上の雲」に隠された歴史の真実」を読んでみます。
それと、先週、「三笠」の艦内に入り、写真をたくさん撮ってきました。おいおい、アップしますので、よろくければご覧くださいませ。
マーちゃん | 2009.03.02(月) 10:25 | URL | コメント編集

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