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2012.02/05(Sun)

晩春

オープニング。風そよぐ北鎌倉驛のプラットホームに、列車の到着を知らせる警笛が鳴る。続いて映し出されたのは円覚寺らしき屋根。うぐいすが北鎌倉の晩春を告げている。

bansyun.jpg


私は鎌倉が好きで去年は3回ほど訪ねた。北鎌倉は映画当時の風景とあまり変わっていない。鎌倉には鶴岡八幡宮という巨刹があるが、北は禅寺が点在し、武士の府の趣を今に残している。

enkakuji.jpg
愛犬と円覚寺

茶会の席に姿を現した紀子(原節子)と叔母のまさ(杉村春子)が楽しそうに言葉をかわす。紀子は大学教授の父(笠智衆)と、ふたりきりで北鎌倉で暮らしている。原さんの、たおやかな仕草が古都の風情によく似合う。歳は27、周りは彼女の将来を案じているが、当の本人はどこ吹く風・・・今の生活に満足しているようだ。友人のアヤ(月丘夢路)から同級生の結婚や妊娠話を聞かされても、焦っている様子はない。結婚を勧めるアヤに「出戻り」と応酬する始末なのだから(笑)。

父は「なんとかしなきゃいけない」と思いつつも、娘を重宝している。「紀子、紀子、オイ、オイ、オイ、お茶」「紀子、タオル」「紀子、帯」「燗がぬるい」・・・そのいちいちに、嬉しそうに「ハイ」と応じる紀子。これではお嫁にいけそうもない。長い二人暮らしが離れ難い愛情関係を生んでいる。

紀子の結婚相手として、父の助手服部(宇佐美淳也)の名があがる。ふたりは一緒にサイクリングするほど仲がいい。車もショップもない国道134号(だと思う)を、七里ガ浜から茅ケ崎へと走っていく。この時、紀子が服部に言った「私、焼きもち焼きよ」が、その後を暗示している。

サイクリングから戻った紀子に、父はさりげなく服部との結婚話を切り出す。すると紀子は「服部さんには婚約者がいるのよ」とケラケラ笑った。どうやら恋愛対象でなかったようだ。だが、服部は紀子のことが好きだったのではないかしら?紀子をバイオリンコンサートに誘ったものの断られ、ひとりコンサート会場にいる姿が寂しそうだった。空席に置かれた帽子とカバンが服部の心情の点景として写される。小津監督は小道具のひとつひとつにさえ、必然的な存在意義を持たせている。

紀子の父親への愛は深い。父の再婚を叔母がほのめかした時に見せた表情に、尋常ならざるものを感じたのは私だけではないと思う。「私、焼きもち焼きよ」の正体見たり・・・だ。あの美しい原節子さんが鬼に見えた。父と行った能の舞台の観客席に、再婚候補の秋子(三宅邦子)を見つけた時の目も深い印象を残す。謡の調べが紀子の恨み節に聞こえた。小津監督は能のシーンにかなりの時間を費やし、父を慕う娘心を深く激しく描いている。

紀子が再婚した父の友人小野寺(三島雅夫)を責めるシーンがある。「おじさま、不潔よ、汚らしい」これは彼女の潔癖さだけから出た言葉ではあるまい。父の再婚問題が頭をよぎったのだと思う。紀子は父を独占し続けかったのだろう。しかし、父は娘を嫁に出さなければいけないことを知っている。「おまえもいつまでもこのままでいられまいし、いずれはお嫁に行ってもらわんと困る」「でも私、このままお父さんと一緒にいたいの、私が行っちゃったら父さん、どうなさるの」ここで、父は娘に再婚すると告げる。再婚話は紀子に見合いをさせるための方便だった。父に反発した紀子は半ばヤケになり、叔母が薦める佐竹という男と見合いする。

親友のアヤに佐竹の印象を聞かれ「叔母さんはゲーリー・クーパーに似てると言うんだけど、私はうちに来る電器屋さんに似てると思うの」結婚するかどうか、迷っているようだ(笑)。話をまとめたい叔母の台詞が可笑しい。「紀ちゃん、つまんないことを気にしてるんじゃないかしら、名前よ」見合い相手の名前が熊太郎であることを、つらつらしゃべっている。熊太郎をどう呼べばいいか、大真面目に悩んでいるのだ。「熊太郎さんなんて山賊を呼んでるみたいだし、熊さんだと八っつぁんみたいだし・・・」点在するユーモアが作品の緊張をほぐしている。機会があれば、小津監督の喜劇作を観たい。

結婚を承諾した紀子は父との想い出を作るために京都を旅する。父が宿で語った結婚論に紀子のわだかまりは消えていく。紀子はどんな家庭を築くのだろう?結婚相手の熊太郎が画面に姿を現さないものだから、余計気になる。花嫁衣装を身にまとい、三つ指ついて挨拶するシーンは泣けた。なぜ、涙が出てきたのか、自分でもわからないが・・・。娘を嫁がせ、ひとりぼっちの邸宅で、リンゴの皮をむきうなだれる父。感慨にふけっているか、寝てしまったのか?この映画には人間関係の最高としての親子の愛情が示されている。
13:55  |  映画  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●ワンコ元気ですか。

相方いなくなって寂しそうですか。たぶんワンちゃんはそういう意識はないと思いますが。

私は「晩春」と「麦秋」をよく間違えます。どちらも婚期が遅れた原節子が結婚する話なのです。たしか「晩春」のリメークに近いのが「秋刀魚の味」だったはずですが。
「秋刀魚」には笠さんが北さんに「どうも近頃オレはお前が不潔に見える」というセリフがありましたが、これは「晩春」から採ったのでしょう。
熊さんがどんな人が知りたいですね。激しく同意です。笑
それにしても原さんのダンナが明治生まれとはケシカランですな。

ご存知かもしれませんが、ラストシーンは、笠さんはリンゴをむきながら泣くという脚本だったのですが、「九州男児は泣かない」という笠さんの抵抗でああなったそうです。小津監督に意見をしたのはアレ一回だけだと笠さんは自伝で申しておりました。

話はそれますが、・・・←司馬さんの書き方。笑
下瀬火薬をウィキで調べた所、発射時に黒煙が出ないというのは誤解だそうです。したがってドラマの描写はあれで正確だったわけです。でも東宝「日本海大海戦」では、たしかロシア軍の黒煙と日本海軍の煙の比較説明があったはずです。
アラン・墨 | 2012.02.09(木) 15:54 | URL | コメント編集

●アラン・墨さんへ

お気づかいくださり、ありがとうございます。
ワンコを連れて、月の出を見に行って、さきほど帰ってきました。聞いてくださいなー!狭い道でUターンした時に、バンパーの下が縁石に当たってしまい、反動でバンパーが2センチくらいはがれてしまいましたよv-12 話がそれました(汗)←司馬流
ワンコは相棒がいなくなって1カ月くらいは、調子が悪そうでしたが、今は元気になりました。

下瀬火薬も黒煙が出ますか!司馬さんが書くことは、全部本当に思ってしまいますよね。説得力があるんですよ。私はだいぶ、洗脳されています(-_-) 「日本海大海戦」は見ましたよ~。録画も残していますので、今度チェックしますね。

>私は「晩春」と「麦秋」をよく間違えます
私も~!!この記事のタイトルを、自分では「晩春」と打ったつもりが「晩秋」になってました。麦秋と晩春が、ミックスしてしまって(笑)。
「晩春」は「秋刀魚の味」や「秋日和」の下地になってますね。最近、私、小津作品に突如、目覚めたんですよ。「東京物語」と「秋刀魚の味」は、たまたま面白かったのだと思っていたのですが、他の作品も素晴らしくて、夢中です。「麦秋」の完成度の高さには脱帽です。小津監督は役者も役名も台詞も使い回しが多いですね。それもまた、いいんですよ。

原さん、大好き♪笑い顔も怒った顔も、みんな好きです。熊は許せませんね(笑)。あんな美人をお嫁さんにもらったら、長生きしませんよ。

ラストのりんごシーンのことは、知りませんでした。笠さんの提案だったのですか!じゃぁ、あれは喪失感からうなだれていたのですね。疑問がひとつ、解決しました。ありがとうございます。あの終わり方はいいですね。
マーちゃん | 2012.02.09(木) 21:08 | URL | コメント編集

昨夜、再見しました。
原さんの鬼のような怖い顔、この映画だけのような気がします。画面がキュッと引き締まりましたね。
月丘夢二さん、キレイでちょっとポーッとしました。
タイトルで桂木洋子とあったので、アレ?出演していたっけ、と、いつ出るかと待機していましたが、ラスト近く清水寺でチョコッとのみの出演で拍子抜けしました。
自分には土建会社のカミナリ社長「台風騒動記」のイメージの三島雅夫さんが上品な紳士で、こういう役もあったんだなと芸風の幅を感じました。
アラン・墨 | 2012.12.02(日) 17:30 | URL | コメント編集

●アラン・墨さんへ

ご無沙汰してます。ChinaやKoreaのことが気になって、ブログをおさぼりしてました。最近、政治と経済に目覚めまして(一過性のことだと思いますが・汗)、ウォン高にな~れ!とか、上海総合指数が下がりますように・・・と、念じながら、過ごしています(笑)。
今まで、親米左派(ヘンな思想です)だったのですが、親米右派になってしまいました。ただし、国粋主義者は嫌いです。

頂いたコメントから話がそれました(>_<)
原さんの顔、怖いですよね。いつもニコニコしているだけに、印象に残ります。
先日、森光子さんが亡くなりました。原さんはどうしているのでしょう・・・。長生きしてほしいな。。。
月丘夢二さんも原さんも、お綺麗ですよね。知的だし・・・。
あ~、三島雅夫さんはカミナリ社長でしたね!イメージが違いすぎて別人みたいです。

そろそろ、ブログに復帰しなきゃ・・・です♪
マーちゃん | 2012.12.04(火) 22:56 | URL | コメント編集

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