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2012.02/18(Sat)

長屋紳士録

戦地から復員した小津監督はノスタルジックな人情喜劇を作った。闇市、パンパン、ギャングものを扱った戦後風俗映画の全盛時に、小津風スタイルを貫いてくれたことが嬉しい。当時の人には脆弱な印象を与えたかもしれないが。

敗戦の日本、人々は混乱し心も荒んでいたことは想像に難くない。そんな時勢の中、小津監督は小市民生活の暗さに目を向けるのではなく、失われた古き良き時代の人情を描いた。本作には復興への願いが込められていると思う。国難を乗り切る時の絆の大切さは、昨年の東日本大震災を経験し多くの人が実感したことである。

舞台は焦土と化した東京の下町長屋。為吉(河村黎吉)のもとに、同居する占い師田代(笠智衆)が浮浪児風の少年(青木放屁)を連れて帰ってきた。*奇抜な芸名ですね(^_^メ) 親と茅ケ崎から出てきて、九段ではぐれた少年を、巣鴨で拾ったそうだ。犬猫じゃあるまいに(笑)。今と違って児童相談所なんてなかったし、警察も迷子ぐらいでは動いてくれなかったのだろう。為吉は江戸っ子らしく「そんなもん、おまえさん、しろうことないよ」(「シ」と「ヒ」の混同)と言って、少年を家にあげようとはしなかった。困った田代は向かいの「おため」(飯田蝶子)の所へ、少年を置いてくる。だが、おたねも迷惑げ。「しっ、しっ」だの「めっ」と、怖い顔して追い出そうとする。しかし、哀しそうな少年を見て、一瞬、目の緊張を緩ませた。

画面は翌朝の風景に切り替わる。焼け野が原に干された一枚の布団。少年がおたねの家に泊まったことと、寝小便をしたことを物語っている。怒ったおたねは、為吉に文句を言うが、誰も少年を引きうけようとはしない。そこで皆で相談し、茅ケ崎に行って父親の消息を探ることになる。誰が行くかをクジで決めるのだが、為吉は、おたねに貧乏くじを引かせるよう細工した(笑)。

画面が転換し茅ケ崎の海が映しだされる。近所の者に話を聞くと、家を引き払い、消息はわからないとの返答だった。おたねは少年を茅ケ崎に置き去りにしようと、海岸を走って逃げる。着物姿のおばさんが、裾をまくって砂浜を走る姿の滑稽なこと(笑)。追いついた少年に、またまた「しっ、しっ」と、手で追い払う。それでもついてくる少年に目一杯の怖顔をするが怯まない。

nagaya.jpg


再び舞台は長屋。町内の寄り合いの席で、笠智衆さんがみせた芸に笑った、笑った。あれはなんなんだろう?長屋の連中は「のぞき」がどうのこうのと言っていたが・・・。茶碗を手に持ち、箸でチンチンチチン♪と鳴らしながら、節をつけて歌うのである。座にいる者も、唄に合わせてチンチンチチン♪、時たま「アッ、ドッコイ」と合の手を入れる。長屋の連中の嬉しそうな顔、笑ってる場合じゃないと思うんですけど。72分という短い尺なのに、笠智衆さんの語り芸に相当な時間を割いている。面白いんだな、これが。「りっぱなもんだね、たいしたもんだよ」(笑) この映画が大好きになった。

人の良いおたねは、少年と暮らすうちに情が移ったのだろう。当初は「おまえ」と呼んでいたのが「坊や」になり、動物園に連れて行ったり、写真を撮ったり、帽子やセーターまで買い与えて可愛がるようになる。自分ではそれを母性愛だと言うが、近所の友達は「孫とおばあちゃんだよ」とからかっている。「坊や」も「おばあちゃん」と言って「おばちゃんだよ」と、たしなめられていたっけ(笑)。

おたねが「坊や」を引きとって育ててもいいと思い始めた、そんな時、「坊や」の父親が姿を現す。九段ではぐれてから、方々を捜していたらしい。父親は、おたねに深々と頭を下げ礼を言った。出て行く親子を寂しそうに見送るおたね。そこへ為吉と田代がやって来る。これが長屋の良いところだ。普段から、互いを気にかけ、何かあると様子を見に来てくれる。ふたりが声をかけると、おたねは急に泣き出した。「アタシは哀しくて泣いてるんじゃないんだよ、坊やがどんなに嬉しかろうと思ってね・・・」「考えてみれば、アタシたちの気持ちが随分昔と変わっているよ。自分ひとりさえ、いいじゃすまないよ。」と、むき出しの主題を提示する。この部分はなくてもよかったのでは・・・。

子供がほしくなったと言う「おたね」に田代は、上野の西郷さんの銅像付近にいると微笑む。カメラが捉えた銅像の周りには、大勢の浮浪児がいた。ユーモアの感情で眺めた人間図を通じて、戦後の病根をついた作品である。



08:32  |  映画  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

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 | 2012.02.18(土) 17:32 |  | コメント編集

●鍵コメさんへ

覗きカラクリの解説をありがとうございます。あれって、小津監督が笠さんに演技指導したのではなくて、笠さんのかくし芸だったのですか!だから、のびのび、やっていたんですね(笑)。独壇場でしたもの~。

覗きカラクリなんて芸は見たことも聞いたこともなかったので、インパクトがありました。
>腕をガラガラ
そういうことだったのですね。何をやってるんだろう?と思いましたよ。

当時の子役の名前は面白いですね、今じゃ、考えられませんよ。

『真実一路』は独特の雰囲気にのまれ、感情移入してしまいました。画面の中に入って、お説教したくなりました。

私は古い時代の邦画をほとんど、見ていないので、
これからもいろいろと教えてください<m(__)m>
マーちゃん | 2012.02.18(土) 22:42 | URL | コメント編集

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