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2012.02/21(Tue)

ドライビング・MISS・デイジー

窓から差し込む光が部屋の調度品を照らす。鏡の前で身じたを終えた老婦人は、黒人メイドに「買い物に出かけるわ」と告げて外へ出ていく。長い廊下と階段が屋敷の広さを表している。背筋をピンと伸ばした老婦人デイジー(ジェシカ・タンディ)は、さっそうと愛車クライスラーに乗り込み、エンジンをかけた。が、その後がいけない。ギアを入れ間違えて、車もろとも隣の敷地につっこんでしまう。デイジーに怪我はなかったが車は破損した。心配した息子のブーリー(ダン・エイクロイド)は、母専用の運転手を雇うことにした。そしてやって来たのがホーク(モーガン・フリーマン)だ。

Driving.jpg

本作はデイジーとホークが共に歩んだ25年の歳月を静かに描いている。そこには淡々とした日常があるだけ、作為的な絵空事のアクシデントはない。画面に説明的なスーパーが一切入らないのが良い。時の流れは、デイジーの乗る車の変遷が教えてくれる。クライスラー、ハドソン、キャデラック、そして最後がベンツ。彼らの住む場所や思想、生い立ちは、言葉のはしばしや小道具に、さりげなく織り込まれてる。説明が省かれた場合、優れた演技者は、画面にない部分、これと明確にはしないまでも、ふんわりとふくらませてくれる。ジェシカ・タンディとモーガン・フリーマンの演技がそれだ。丹念に作られた映画を丹念に観る・・・こういう映画が少なくなったように思う。世の中がせわしくなった分、せめて映画を見ている間ぐらいはゆっくり、時を過ごしたいものだ。

この映画を劇場で観てから20年以上経つ。昨日BSで放送されたのを久しぶりに観たが、公開時とは違う感想を持った。それは、本作に描かれる「老い」が人ごとに感じられない年齢に、自分がさしかかったらだろう。残りの人生を豊かにしてくれる友の存在は貴重だ。

デイジーがホークに出会ったのは72歳、この時ホークは60歳だった。時代は1948年、アトランタ。アトラントと言えば、『風と共に去りぬ 』の舞台となった所。黒人差別の強い土地である。映画の中でホークが言う「給油所のトイレは黒人禁止なんです」。これと呼応するように、劇中、キング牧師の演説が流れる。「変化の時代における我らの最大の悲劇は、悪意に満ちた人々による中傷や暴力ではない、善意ある人々の沈黙と冷淡さです」デイジーは小さくうなずきながら聞いていた。

デイジーはユダヤ人で、彼女もまた、差別される側の人間だ。亡き夫とその父の起した事業が成功し、富を得た成金の未亡人である。誇り高い元教師のデイジーは、そのことを気にしている。だが、ユダヤ人であることには少しの引け目も感じていない。同じく、ホークは黒人に生まれてきたことを恥じていない。世の中をあるがままに受け入れ、人を恨んだり、腹を立てたてるということを知らない男なのだ。気難しいデイジーの不愉快な態度も、ゆったりと包み込んで許す。違っているようで、根幹の部分で響き合うものがあったのだろう、段々とふたりは心を通わせていき、ついには、デイジーの口から「ホーク、あなたは親友よ」という言葉が出る。それを聞いた時のホークの、誇らしげな表情が心を打つ。ふたりが真の信頼関係で結ばれた瞬間だ。

ホームに入居したデイジーを見舞うため、車を走らせる息子ブーリーの横にホークが座っている。運転手のホークは、もういない。デイジーのベスト・フレンドとして助手席にいるホークを見て胸があつくなった。ホームでデイジーが息子に言った台詞が可笑しい。「ブーリー、看護師と遊んでらっしゃい」ブーリーは、もう老人になっているが、デイジーの目には子供に映っているのだろう。子供抜きで密かに話したかったことは・・・。「今も息子から給料を?」「ええ、毎週」「いくら?」「それは彼と私だけの秘密です」「ボッタクリね」このやりとりは、随分昔にもかわされていた。ボケて口に出した言葉かと思ったが、続く台詞を聞いて、ホークへの思いやりだとわかる。「元気なの?」「なんとかやっています」「私もよ」「それが人生というものです」ふたりの会話は過酷な老いを感じさせない。デイジーに感謝祭のパイを食べさせるホーク。どこまでも優しい映画である。

16:33  |  映画  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

エイクロイドがマジメな役でマジメに演技しているのが面白く感じたものです。
フリーマンの黒人がしゃべる南部ナマリの英語が勉強になりました。と言っても発音の雰囲気だけですけど。何を言っているのかよく聞き取れませんでした。
言葉の語尾をワーv-162・・と上げる抑揚があるんです。あのしゃべりかた面白いですね。
アラン・墨 | 2012.02.23(木) 23:21 | URL | コメント編集

●アラン・墨さんへ

エイクロイドさん、声がトム・ハンクスと似ていますよね。
お年寄りって、年月が経っても、外形はあまり変わらないじゃないですか。
だから、エイクロイドさんが、25年の間に、一番変わったような気がします。すっかり、おじいちゃん(笑)。

アラン・墨さんはアマ無線をやってらして、いろんな国の人の英語に接する機会が多いから、イントネーションの違いがお分かりになるんでしょうね。
私は恥ずかしながら、英語と日本語の区別しかつきませんよー(>_<)
ただね、黒人の英語と白人の英語は、なんとなく違って聞こえます。骨格の違いからでしょうかねぇ。

フリーマンさん、しゃべり方と笑い方も面白かったですよねー!
マーちゃん | 2012.02.24(金) 14:05 | URL | コメント編集

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