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2012.03/12(Mon)

無法松の一生

番組の解説によると、1943年に阪東妻三郎主演の同名作品を当時の検閲によってカットされたのを不満とした稲垣浩監督が、再び伊丹万作の脚本で映画化に取り組んだ、ベネチア映画祭金獅子賞受賞作品・・・とある。

muhoumatu_2.jpg

明治三十年、九州小倉。江戸時代の名残りがある街並み、通りの人の装いは和装、時代の色はくすんでいる。その中で、白い洋装の巡査の姿は目立つ。巡査は古宿に「無法松」と呼ばれる松五郎(三船敏郎)を捜しにきた。「おかぁ」(飯田蝶子)は「知らない」と言うが、顔に「います」と書いてある(笑)。おぉ、飯田蝶子さんだ!『長屋紳士録』から10年、立派な(?)老女になっている。老けメイクなのか、自然の成り行きかは微妙だなぁ。

「おかぁ」は無法松をかばっている。なのに、二階にいる当の本人が大声でわめきちらし、巡査に所在を教えてしまった。「おかぁ」と巡査は笑っている。事件を起こして追われる身ではないようだ。巡査の口調には松五郎への好意がにじみ出ている。乱暴者だが、数々の武勇伝を持つ松五郎は町の名物男らしい。映画の導入部では松五郎の無法ぶりがイキイキと描かれている。

松五郎は天涯孤独の身の上で、満足な教育も受けていない。時に無鉄砲な行動に走るが、義侠心厚く、自分が悪いと思ったことは素直に謝る。この天津爛漫さが彼の魅力だ。グレもせず、車を引いて生計を立てている。

ある日のこと、木から落ちた少年・敏雄を、家に送り届けたことで、松五郎の人生はささやかな彩りをおびる。敏雄は吉岡大尉(芥川比呂志)の一人息子だった。母良子(高峰秀子)を見た時、松五郎の恥じらいを私は見逃さなかった(笑)。それが証拠に屋敷を出る時は、奥に引っ込んだ良子の姿を何度か振り返って見ている。高峰さんの奥ゆかしさが、松五郎の粗雑さとの対照で上品な甘みをもつ。

明治三十年と言えば、まだ封建時代の気分があったと思う。松五郎と吉岡家の人間は身分が違いすぎる。だが、吉岡大尉は温かく松五郎をもてなし、息子はなつき、母良子は優しかった。自分を同等の人間として接してくれるることが、松五郎には嬉しかったにちがいない。吉岡大尉が急死した後は、酒や賭博やケンカと縁を切り、良子とその息子を献身的にささえていく。それが彼の生きがいだった。

muhoumatu_1.jpg


品が悪くて荒っぽい松五郎だが、良子に対してだけは礼儀よく振る舞う。小倉に帰省した大将には、ため口をきいても、良子には丁寧な言葉を使うのだ。尊敬が憧れへ、そして愛へと変わっていっても不思議はない。良子と敏雄に聞かせた祇園太鼓の激しい音は松五郎の心の叫び。本作の見せ場である。「奥さん、俺の心は汚い、奥さんにすまん」と泣きながら、自己嫌悪を爆発させるシーンが観る者の心を揺さぶる。遠い昔の出来事も、経験したばかりの出来事も、一度過ぎていまえば同じ過去。車輪が松五郎を過去へと走らせる。「無法松」と言われた男は、真っ直ぐな一本道を走り続けた。誰に恥じることもない一生だ。
12:26  |  映画  |  TB(1)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

旧作・新作とも印象にあります。
旧作はカメラが宮川一夫さんで、当時としては斬新な手法を使っていて勉強になりました。
ただ、旧作は検閲によるカットがあり、これは新作から抜けたシーンを想像してみるのも面白いですね。

ところで、漫才ブームのころの「のりお・よしお」の無法松コント憶えていますか。
「ぼん。ぼん、じゃござんせんか。すっかりお猿に(大きく)なっちまって」・・・
というセリフがほんとうに映画にあるかどうか、観ながら探したのですが、新・旧作とも無かったような気がします。ひょっしてお芝居のほうにあるかもしれませんね。
アラン・墨 | 2012.03.13(火) 11:11 | URL | コメント編集

●おひさしぶりです。

懐かしい映画です。
私にとりましては、リメイクのあとからオリジナルを見たという、珍しい映画でもあります。
トラックバックさせていただきました。
少しリメイクに厳しい手記を書いてはいますが、いま思い返せば、三船敏郎、高峰秀子の演技は、軍部の厳しい検閲で出せなかったオリジナルの“恋する思慕の味”を補っていたと思います。
三船敏郎が、高峰秀子を見た時の恥じらいを見逃さなかったマーちゃんの眼力、さすがです。
あっ、もしかしたら、えらそうな言葉を吐いたかもしれません。決して他意は御座いません。ごめんなさい。
アスカパパ | 2012.03.13(火) 14:38 | URL | コメント編集

●アラン・墨さんへ

コメントありがとうございます。
アラン・墨さんは旧作と新作の両方をご覧になっているのですね。私は新作しか見ていないので、宮川一夫さんの撮影がどんな風だったのか、興味があります。あの人、凄いカメラマンですね。小津監督の『浮草』は宮川さんがカメラをまわしてますが、いかにもいかにも・・・という感じがしました。ただ、小津作品には、あまり合わないのかなぁと思いました。溝口作品や黒澤作品の方が、宮川さんの技量が生きるような気がします。

「のりお・よしお」は好きでしたよー。「ホーホケキョ」とか「ツクツクボーシ」とか「ラッタッター」とか、ありましたよね。
>すっかりお猿に(大きく)なっちまって
そのネタは、かすかに覚えているような、いないような・・・。無法松の一生からのものだったんですね。お猿ですか(笑)。今度、私も捜してみます。お猿ねぇ、お猿かぁ。。。
マーちゃん | 2012.03.13(火) 16:17 | URL | コメント編集

●アスカパパさんへ

コメントとTBをありがとうございます。
私が知る限り(浅い知識ですが・汗)、リメイクの方が、オリジナルを上回ったという例は、非常に少ないです。どれか挙げてみろ・・・と言われたら、咄嗟に出てきません。おそらく、『無法松の一生』も、オリジナルの方が優れているのではないでしょうか。オリジナルを見たいです!

なるほど、軍部の厳しい検閲ですか?!そうかぁ、40年代の映画は、色々と制約を受けることが多かったのでしょうね。そうですね、そういうことも頭に入れて、古い邦画は見なければいけませんね。勉強になります。

恥じらう三船さんなんて、あまりお目にかかることがないので、その表情に目がいきました。可愛かったです。眼力ですか・・・お褒め下さりありがとうございます。時に粗さがしに力を発揮する眼なんですが(笑)。
マーちゃん | 2012.03.13(火) 16:29 | URL | コメント編集

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無法松の一生(オリジナル&リメイク)

 【1958年当時の感想記を原文の儘コピー→】阪東妻三郎主演の名作(1943年)を当時の監督稲垣浩が色彩ワイド作品として再映画化(1958年)した。前作は余りにも評判が良かっただけに今回の作品は難しかったのではないか。小生は前作は見ていないが【注.後日テレビ放映で見る?...
2012/03/13(火) 14:17:38 | アスカ・スタジオ

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