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2012.03/04(Sun)

ヒューゴの不思議な発明

Hugo_2.jpg


ネタばれしてます
カチカチカチ・・・時を刻む音が映画の幕開けを告げる。巨大な時計の内部をくまなく写しとっていくカメラ。その時計は駅に設置され、構内を行き交う人々に時間を伝える大切な役割を担っている。駅の時計であるから、正確でなければいけない。ひとりの少年が、巨大時計の時間合わせをしている。浮浪児のような少年がどうして、時計台の中にいて、そんな仕事をしているのだろう?

次にカメラはホームで列車の到着を待つ人々を捉えた。縦に移動し映像に奥行きを出している。それを3Dで見せるのだから、その臨場感たるや凄まじく、酔いそうになった。時は1930年代。雪の舞う幻想的な夜景が目に飛び込んでくる。私の直ぐ前にも降ってきた(^J^) 遠くにエッフェル塔を配したパリの光景は息をのむ美しさだ。パリ万博に合わせて建造された電波塔は未来の到着を待っている。

マーティン・スコセッシ監督初の3D映画。今年度アカデミー賞の「撮影賞」「美術賞」「視覚効果賞」「音響編集賞」「録音賞」を獲得したそうだ。理屈をいちいち考えて納得する必要がない映画だと思って観に行った。ところが、どっこい、スコセッシ監督が一点一画ゆるがせにしない姿勢で作った、とても深い作品だった。

冒頭の美しいシーンが我々の心から雑念を取りはらう。眼の前に映し出されている映像に見入り、心地よく同一化されてゆくのを感じた。駅の時計台の少年の素性は、フラッシュバックの中で明かされる。少年の名はヒューゴ(エイサ・バターフィールド)、時計職人の父(ジュード・ロウ)は火事で命を落とした。父が残してくれた物は機械人形だけ。博物館の倉庫にあったのを父が拾ったものだ。修理をすれば、文字を書く人形だと言い、作業にいそしんでいた父。少年は形見となった機械人形の修理を受け継ぐ。父からのメッセージを秘めた人形だと信じつつ・・・。

この頃のパリは浮浪児狩りのようなものがあったようだ。捕まれば即、孤児院行き。ヒューゴは駅の時計台のネジを巻いている叔父に預けられる。だが、その叔父は姿を消してしまい、ヒューゴは一人で時計台に住むようになる。一人で住んでいることがばれないよう、時計を正確に動かし、叔父の不在を隠さねばならなかった。ヒューゴの居場所は、世間と隔絶されている小さい世界。そこは現実の世界とはほど遠く、その中で日々、時計のネジを巻き、機械人形の修理をする・・・。ヒューゴは文字盤の隙間から見るパリを見て、大きい世界を思った。エッフェル塔は月と対峙している。月が大きい。私は月見を趣味にしているので、ちょっと不思議に感じた。物語が進むにつれわかったことだが、月は隠れた主役である。

ヒューゴは時計台の中から、構内のさびれた玩具屋を見つめている。店主のパパ・ジョルジュ(ベン・キングズレー)の瞳には時計台が映っているが、中にいる少年を捉えてはいない。ヒューゴはこの店から、機械人形を修理するための部品を失敬していた。食べ物は、鉄道公安官(サシャ・バロン・コーエン)の目を盗んで調達している。ある日のこと、店のネズミのオモチャを盗もうとし、店主パパ・ジョルジュに見つかってしまう。してやったりとほくそ笑む店主。だが、ヒューゴのポケットから出てきたノートを見た瞬間、表情がこわばり、少年からノートを取り上げる。ノートには機械人形の修理方法が書かれていた。少年はノートを返してもらおうと、店主の家まで行く。そこで、イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)という少女と会った。彼女も両親を亡くし、店主夫婦に養われていると言う。謎解きが大好きなイザベルはヒューゴから話を聞き、協力を申し出る。

役者は揃った。ここからが、謎解きだ。互いに孤児ということもあってか、ふたりは次第に心を通わせていく。映画が大好きなヒューゴは、父と観た映画の話をする。「人間の顔をした月の目玉に宇宙船がつきささるんだ」イザベルは映画を観たことがない。それを知ったヒューゴは、彼女と映画館に忍び込む。上映されているのはハロルド・ロイドの『要心無用』。大時計にぶら下がっている映像で有名な映画である。目を輝かせて画面に見入る少女。彼女も、すっかり映画の虜になった。

物語は機械人形の秘密を、少しずつ明かしながら進んでいく。イザベルは機械人形を動かすハート型の鍵を持っていた。パパ・ジョルジュと機械人形には因縁があるに違いない。鍵を差し込むと、人形は1枚の絵を描いた。それは人間の顔をした月のイラストとジョルジュ・メリエスのサイン。それを見たイザベルは「パパ・ジョルジュよ」と驚く。機械人形を作ったのはイザベルの養父だったのだ。ここでまた謎が深まる。なぜ?

ふたりは映画アカデミー図書館を訪ね、ジョルジュ・メリエスのことを調べる。死んだことになっているパパジョルジュは映画創成期に名を馳せた偉大な監督だったのだ。機械人形の絵は、史上初のSF映画と後世の人が呼ぶことになる『月世界旅行』のワンシーン。映画史の本を開くと、いの一番に写真つきで解説されている、あの映画だ。月の目にささっているのはミサイルに似た宇宙船である。『月世界旅行』以前の映画は動く映像でしかなかったが、そこに夢を吹きこんだのがジョルジュ・メリエスだった。しかし、映画が庶民の娯楽でありえた時期は長くは続かなかった。戦争が始めり、映画どころではなくなったからだ。フィルムは溶かされ、靴のヒールへと姿を変えた。そして、ジョルジュ・メリエスは忘れられた存在となり、映画の現場から離れた。輝かしい時代を知っているだけに、受けたダメージは大きく、パパ・ジョルジュは心を閉ざしてしまう。

ヒューゴはつぶやく。「目的を失くすと人って壊れるんだ」そして、時計台からパリの夜景を見て言う。「みんな、部品なんだ、どれかひとつ欠けても動かない。それぞれ役割があるんだ」自分の役割は、壊れたものを直すことだと思っている。そうすることによって、大好きだった父と繋がっていたかったのだろう。ひとりじゃないとの思いがヒューゴを突き動かす。機械人形をハートの鍵で直したように、ジョルジュの心を治したい・・・と。

ヒューゴは図書館で出会った映画学者の手を借りて、ジョルジュの作品を復活させる。映写機が映したのは『月世界旅行』。それを見つめるジョルジュの顔が笑っている。封印していた映画の記憶が、言葉となって、溢れるように口から飛び出す。当時はフィルムに直接色付けしカラーにしていたそうだ。月の住人が一瞬にして消え去るトリックを得意げに披露する。なんのことはない、これまたフィルムに手を加えて作りだした映像だ。マジシャンでもあった彼は映画に魔法をかけた。なんと、夢のある仕事だろう!

ヒューゴは時計の針を過去に戻して、偉大な作品を救った。映画学者の呼びかけにより、失われたフィルムが集められ、ジョルジュ・メリエスのための祭典が行われる。彼の映画と心は、こうして蘇った。

再び光を得た映画は幸せである。私の尊敬する小津安二郎監督の全作品の約半数は、今日では失われてしまっている。登場した頃の映画は単なる娯楽であり、公開が終わってしまったフィルムはゴミ同然だったと聞く。映画の歴史も100年を超え、芸術品としての価値を持つものが多い。フィルムの劣化を考えると、発掘と保存を急がねばならない。マーティン・スコセッシ監督は映画が始めて上映されたパリを舞台に、映画の歴史と愛を、完璧な技術と構成で描いて見せた。映画職人の技あり一本である。
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