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2012.07/16(Mon)

流れる

神田川だろうか、それとも隅田川か・・・キラキラ光る水面を小さな舟がゆったりと進む。舞台は柳橋。
Nagareru.jpg
本作は芸者置屋に集う女たちの生活を、成瀬監督が哀切感を込めて描いた花街物語である。出演者が豪華絢爛。置屋の主人・おつたを山田五十鈴、その娘・勝代を高峰秀子、女中を田中絹代、芸者・染香を杉村春子、なな子を岡田茉莉子、料理屋の女将を栗島すみ子が演じている。しかし、映画は花柳界の華やかさには目を向けず、借金返済に四苦八苦する女、男に捨てられる女を生々しく描きながら進んでいく。

田中絹代が女中に雇われるシーンはユーモラスで、唯一ここだけは明るい。田中さんが他の女と違う種類の人間だということを印象付けるねらいがあるのだろう。「職業安定所から参りましたんですけれど」と言って深々と頭を下げる。屋履歴を見たおつねは「山中なしか?なんて言うの?梨の花?」「リカと申します。」「どっちかと言うと、アンタみたいな年寄りの方がいいんだけどね。」45才で年寄りと言われたんじゃ、私はどうなる(笑)。芸者の世界では30を超えると、年寄りらしい。年寄りと言われても微笑みを浮かべ、「年寄りで使いづらいとは思いますがよろしくお願いいたします」と、両手をついて挨拶をする梨花には清楚な美しさがある。梨花は呼びづらいからと、お春と改名したのは源氏名を付ける感覚かな(笑)。梨花は異質な存在ではあるが『家政婦は見た』や『家政婦の三田』ように、登場人物を客観的に見つめることはしない(笑)。

当事者は言うまでもなく、観ている者もまたウンザリするほかはない、気の滅入るようなエピソードが続く。それが成瀬ワールドなのかもしれない。見終わって、釈然としないものを感じるのだが、女優の描き方は上手い!山田五十鈴さんが電話のコードを手に巻きつける仕草の艶っぽさ、好きな男と会うために嬉々として化粧を施す愛らしさ。着物の帯を締めるショットは浮世絵の美しさを持つ。女優の繊細な動きを、これほど丁寧にすくい上げ、一つ一つに意味を持たせることができる監督は、あまりいないのではないだろうか。

山田五十鈴は『祇園の姉妹』では、どうにでもしやがれという図太い捨て身の体当たりでぶつかっていく芸者を熱演したが、本作ではゆったりと腰をすえた優しい女主人を、貫禄をもって演じている。その存在感はハンパじゃない。こういう女優さんを使うのは難しいと思う。一歩、間違うと、山田五十鈴が役を飲み込んでしまう危険があるからだ。だが、おたまは踏みとどまった。田中絹代、高峰秀子、杉村春子、岡田茉利子も、それぞれの個性を生かし、のびやかに演じている。わけても、料亭の女将を演じた栗島すみ子の演技は異彩を放っていた。掴みどころのない表情で観客を惑わし、おつたを騙す。女狐とはこういう奴のことを言うんだろうな。大したアマだ。意表をつくラストは彼女によってもたらされる。世の中、甘くないと痛感した。

山田五十鈴さんのご冥福をお祈りいたします。

タグ : 成瀬巳喜男

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