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2012.05/29(Tue)

浮草物語

後に小津監督自身によって再映画化された『浮草』のオリジナル版。昭和9年に公開されたサイレント作品である。撮影は茂原式トーキーの開発者で、飯田蝶子さんの夫の茂原英雄氏、そして撮影補助として厚田雄春氏の名前がクレジットされている。調べてみると、厚田カメラマンは『若人の夢』(昭和3年)から小津組に入ったようだ。(ウィキペディアでは『若き日』からとあるが)それ以降、遺作の『秋刀魚の味』まで、小津さんが松竹で撮った、ほとんどの作品に厚田氏はかかわっている。

リメイク版『浮草』は、名カメラマン宮川一夫氏がフィルムを回した。道を挟んで男女がののしり合うシーンはオリジナルにも出てくるが、リメイク版は暴力的などしゃぶりになっていて、異様な感じだ。小津作品に雨のシーンは珍しく、オリジナル版『浮草物語』では、雨で旅の一座の侘しさを表している。田舎村の芝居小屋で公演している時、ポツポツと天井から雨粒が落ちてくる。タライやバケツが持ち込まれるが、本降りになった雨は舞台と客席を容赦なく濡らしていく。雨漏りがするような、おんぼろ小屋で一座は芝居をしているのだ。リメイク版には、この雨漏りシーンがない。昭和30年代になると、雨漏りするような小屋はもうなくなっており、削ったのではないだろうか。リメイク版の設定は昭和30年代の伊勢志摩に変更されている。(入場料が50円、駅の観光ポスターに伊勢志摩の文字がある)

ストーリーは。
とある田舎の村に「市川左半次一座」が4年ぶりにやってきた。座長の喜八(坂本武)、その愛人・おたか(八雲理恵子)、おたかの妹分のおとき(坪内美子)アマ公(山田長政)、とっつぁん(谷麗光)とその孫の富坊(突貫小僧)ら一行だ。アマ公がビラを撒いて芝居の開催をふれまわる。その後をついていく子供たち。娯楽の少ない時代の田舎町では、一座の来訪を心待ちにする人も多かっただろう。

小料理店の女将・かあやん(飯田蝶子)も、喜八の到着を心待ちにしていた。かあやんは「お前さん、もう来てくれる時分だろうと思って待ってたんだよ」と、満面の笑顔で喜八を迎え入れた。かあやんと喜八は子までなした仲である。息子の信吉(三井秀男)は去年、農学校を卒業して今は補習科へ通っている。来年は兵隊検査だ。喜八のことを父とは知らない信吉も「芝居のおじさん」との再会を喜ぶ。大きくなった信吉を見て喜八は「甲種だな」と満足そうに言う。兵隊検査には甲・乙・丙の3段階があり、身体頑健な者は甲種合格となった。ちなみに小津監督は甲種合格しており、ちょっと自慢が入っている台詞かも(笑)。甲種合格は大変名誉なことだった。

喜八と信吉が並んで川釣りをするシーンは、『父ありき』の笠智衆さんと佐野 周二さん親子が見せた動きと同じである。長い竿を放物線を描くように、右から左へ何度も何度も動かす。呼吸の合った動きは親子ならではということか。将棋をさす姿も親子の情感溢れるシーンだ。息子の学生帽を被った父親の嬉しそうな顔、息子は父の手ぬぐいを頭に載せて勝負に熱中している。
ukigusamonogatari.jpg

この時の喜八演じる坂本武さんの品の悪さ(笑)。膝を立て、トウモロコシをくわえ、体を掻きながら将棋を指している。我が子に父親と名乗れないのは、こういう仕草が身についてしまった旅芸人の性分を、恥じているからに他ならない。「やくざな親父なら ない方がましだよ」と、喜八は寂しそうにつぶやく。昭和の始めは今と違って、旅役者への偏見があった。

やがて、かあやんと喜八の関係は、愛人・おたかの知るところとなり、ひと悶着が起こる。かあやんの店にやってきて嫌味を言うおたかに腹を立てた喜八は、彼女を雨の降りしきる外へ引っ張り出し叱りつける。「手前なんかの出しゃばる幕かい!」このシーンはリメイク版の見せ場だが、オリジナル版では、ふたりは立ち止まったまま。バストショットの切り返しで会話が進行し、フルショットは一瞬だけである。雨はさほど強調されていない。技術的に、難しかったのだと思う。

気のおさまらないおたかは妹分のおときに、信吉を誘惑するよう命じる。始めはだまそうとした「おとき」だが、次第に二人は愛し合うようになった。それを知った喜八は怒り、おたかと別れ、かあやんと暮らす決心をする。しかし、「おとき」との仲を認めない喜八と信吉は、激しく対立する。が、「おとき」の真心を知った喜八は、かあやんに後を託し別れを告げた。息子に肩身のせまい思いをさせたくないからだ。喜八は一座を解散し、別の土地で浮草稼業を続けることになった。旅の駅には「おたか」がいて、同じ汽車に乗り、上諏訪を目指す。夜汽車の中、酒を酌み交わす二人には諦観と安堵の表情を浮かべる。小津映画には様々な親子が登場するが、本作の親子は、ほろ苦くやるせない。

タグ : 小津安二郎

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