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2012.07/12(Thu)

好人好日

「この映画の人物並に物語は殆どすべてフィクションである」という、ことわりがあって、映画の幕があく。タイトル音楽が不気味に滑稽に流れる。そして、様々な文房具のスケッチをバックに、スタッフとキャストがクレジットされる。監督は『本日休診』の渋谷実。ここまでで、どんな映画なのか、察しがつく。おかしな作風に違いない(笑)。

koujin_1.jpg

ゴーン♪奈良のお寺の鐘がなる。東大寺の大仏さんに、登紀子(岩下志麻)が、真剣な顔でお願い事をしている。「大仏さん、どうか私の願いを聞いてください。私に縁談があるんです。相手の人は200年も続いた古い墨屋の息子さんなんです。その方のお姉さんが今日、正式にお話にくることになってるんです。私はその人と結婚して幸せになれるでしょうか?私のお父さんは大学の先生で変人です。数学のこと以外は何一つ知りません。今の両親は本当のお父さん、お母さんじゃありません。」この台詞が、そのまま、本作のストーリーだ。父親・尾関を笠智衆さん、その妻・節子を淡島千景さん、恋人・佐竹を川津祐介さん、その姉・美津子を乙羽信子さん、おばあさんを北林谷栄さんが、それぞれ演じている。

奈良のシンボル・鹿の前に座り込んでいる尾関先生(笠智衆)に挨拶し、通り過ぎた青年がいた。娘の登紀子が「今の人、どなた?」と聞くと、「そんな失礼なことを聞くもんじゃない」と、登紀子をたしなめる。えっ、失礼なことかな?変人の頭の回路はどうなってるんだろう?案外、奥深いのかも(笑)。笠さんのとぼけだ感じがいい。ただ、いるだけでユーモラスなのに、本作では奇想天外なことをし、元々持っている可笑しさを増幅させている。変人ぶりを示す数々のエピソードが笑いを誘う。カンカン照りの日に、雨靴を左右逆に履いて職場にいったり、トイレからズボンを後ろ前にして出てきて、ウンチする時はこの方が便利だと言ったり・・・。物に頓着しなさすぎ(笑)。喫茶店で口を開けて野球中継を見ている顔がロドンっぽい。○○と○○は紙一重と言うからなぁ。優秀な学者だが、給料は安く、月末は珈琲代にもこと欠く生活だ。

ある日のこと、登紀子の恋人・佐竹が挨拶にやってきた。「お言葉通り遊びにきたんですが」と、緊張して言うと、「ほぉ、何して遊ぶの?」と、真顔で聞いている。そして、ろくに話もせず、土産の羊羹を犬に食べさせ、佐竹を残して喫茶店へ行ってしまった。もしかしたら、娘の恋人に会って動転し逃げたのかな?変人とはいえ、娘を思う気持ちは、常人と変わらぬものがあるのだろう。血はつながっていないが、両親はを愛情を込めて育てている。

koujin_4.jpg

変人、変人と、笑い者にしてはいけない。尾関が文化勲章を受けることになり、周りは大騒ぎだ。当の尾関は勲章のなんぞに、何の価値も見出してはいないが、年金が50万円つくと聞いて、素直に受けることにした。尾関は妻を伴って東京に勲章をもらいにいく。夫婦の東京の宿は、以前尾関が住んでいた、おんぼろアパート。大家は泣いて喜ぶ。「昔、御世話をした学生さんが、世界的数学者になって、しかも昔のことを忘れないで、こんな汚い下宿に泊まってくださるなんて」こんな時、変人は空気が読めないものだから、「キレイな所に泊まりたくても金がなかったんだ」なんて言ってしまう(笑)。常識がないなぁ。

妻は女学校時代の友人が経営する料理屋に、尾関を連れていく。思い出話に花を咲かせる二人の横で、尾関がいきなり、旧制一高の寮歌を歌い出した。「嗚呼玉杯(ああぎょくはい)に~♪」私の父は地方の旧制高校を出ているが、一高へのあこがれが強く、見合いの席で、いきなり嗚呼玉杯を歌い、母を面食らわせた(笑)。閑話休題。下宿に戻って休んでいるところに、泥棒が入る。怪しい男に気づいた尾関は慌てる風もなく、「おい、お客さんだよ」と、寝ている妻を起こし、お金と勲章を渡してしまった。

再び奈良。帰ってきた尾関はマスコミの追いかけられ、一躍、時の人になる。多くの祝賀会が計画されるが、彼はどれにも姿を表さず、お寺の和尚さんの所へ身を隠す。心配して迎えにきた娘に、尾関は妻への思いを語り、結婚の意義を説く。そこにいるのは、世界的数学者でも、文化勲章受賞者でも、大変人でもない、とても優しい父親だ。この二人は、小津監督の『秋刀魚の味』でも、父と娘で共演している。最後、泥棒が勲章を返しにきて、メデタシ、メデタシ。お寺の鐘がボーンとなって映画は幕を閉じる。


タグ : 渋谷実

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Comment

笠さんが淡島さんに今までの苦労をねぎらって酒をついでやるシーンにはホロッとしました。
でも笠さんが岩下さんに「猫の子のようについてきた」とサラリと言ってしまうのにはショック。ナント薄情なことを言うの。・・・
やっぱり天才というのは常識がズレている。というのを表現したのでしょうか。
マスコミのヤラセ撮影のシーンは爆笑ものでした。
祝賀会で全員ハゲおやじが頭を並べて勲章紛失をウワサしているのも爆笑です。
アラン・墨 | 2012.07.13(金) 11:27 | URL | コメント編集

●アラン・墨さんへ

淡島さんがキッチンドランカーなんですよね。お酒をついてあげる時に言った「おまえ、年とったなぁ」っていうのが、しみじみ感を出していました。
>「猫の子のようについてきた」
筆屋だったか硯屋だったか、花沢徳衛さんが岩下さんのことを、血統書があるとかないとか(記憶がアバウトですみません)言ってましたよね。当時はああいう境遇の子供が多かったのでしょう。
笠さん、ズケズケ言ってますけど、照れ屋さんなのかもしれませんね。それにしても、常識がズレてます(笑)。

変人のくせに、マスコミの「あれしろ、これしろ」に素直に応じているのが可笑しかったです。作り笑いなんかしちゃって・・・。

おハゲさまが、頭を寄せ合ってヒソヒソ言ってるのは爆笑ものです!あれはプロの役者さんなのでしょうか、だとしたらオーデションした?(笑)それとも、その辺にいた人に声をかけて撮影に協力してもらったのか?撮影現場はパッと明るくなったと思いますよ。
マーちゃん | 2012.07.13(金) 14:26 | URL | コメント編集

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