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2012.08/15(Wed)

血と砂

ネタバレしてます。未見の方はスルーしてください!

昭和二十年夏、北支戦線の乾いた大地。砂煙をあげ、少年兵たちが「聖者が町にやってくる」の軽快な音楽をかき鳴らし、躍るように歩いている。トロンボーン、フルート、大太鼓、小太鼓、シンバル、サックスらから編成された軍学隊だ。皆、若い。それもそのはず、音楽学校を出たばかりのヒヨッコたちである。彼らの前に、馬に乗った男が、地平線の彼方から現れた。少年たちに転属を申し渡した師団司令部人事課の小杉曹長(三船敏郎)だ。軍楽隊のリーダーらしき少年が曹長を睨む。「みんな、ご機嫌ななめだな。俺も貴公ら同様、転属になった。最前線へ島流しだ。どうだ、一緒に行くか?」少年兵は曹長に付いていくしかない。彼らは返答の代わりに楽器を演奏し、ステップを踏みつつ前進を始めた。カメラが少年兵の足下を写す。軽やかで楽しげなのは、まだ地獄を見ていないからだろう。曹長の銃が火を噴いた。ここはゲリラの名所、音を出して歩いてたら、格好の標的になるわなぁ(汗)。

chitosuna.jpg

一行は墓穴を掘っている持田一等兵(伊藤雄之助)と出くわした。通称・葬儀屋、戦地に来て五年間、穴ばかり掘っている。曹長が「この隊に小原という見習い士官がいるだろう?」と聞いたその時、銃声が鳴った。「ゲリラでも銃殺したのか」葬儀屋が答えた。「いえ、その小原見習い士官であります。」小杉曹長の顔色が変わる。曹長は慌て味方の陣地へと馬を飛ばした。曹長の息が乱れているのは、駆けてきたせいだけではないようだ。岡本作品には、時にミステリー色が漂う。「見事だ、額のど真ん中に一発、誰が狙った?」それに答えて一歩前に出たのは、炊事係の七年兵(佐藤允)だった。墓場へと運ばれていく見習い士官の亡骸を、軍楽隊の少年兵たちは明るい音楽で見送る。追悼の曲が「海ゆかば」では寂しすぎる。人生を22、3歳で終えてしまうのは短い。せめて、にぎやかに送ってやりたいと思っての選曲であろう。葬儀屋が土をかぶせながら言った「靖国になんて行くなよ、他の神様にイジメられるから」は、岡本監督のメッセージだが、どういう意味だろう。英霊なんぞになったら、八百万の神々の怒りに触れるということか、それとも、華々しく散った軍神たちからイジメられるということか?いずれにせよ、靖国信仰を批判する台詞である。

銃殺命令を下した佐久間大尉(仲代達矢)を非難する曹長に、大尉は見習い士官が敵前逃亡を謀ったことを伝える。「ヤキバ」と呼ばれる陣地の守備を放棄して逃げた疑いを持たれたのだ。本人は通信機が壊れたので知らせに帰ったと証言したらしい。離脱が全滅の前か後か、証拠はない。あるのは拷問の痕。曹長は戦死扱いにしてくれと頼むが、佐久間大尉はそれを退ける。怒った曹長は大尉を殴り逮捕されてしまう。営倉で軍法会議を待っていると、見習い士官を銃殺した七年兵が、調理場で暴れた罪で、放り込まれてきた。牢には戦闘を拒否して3年間も閉じ込められている元通信兵もいた。さらに、小杉曹長を脱走させようとした葬儀屋も入ってきた。銃殺もやむなしと覚悟を決めた曹長だったが放免となる。これは、曹長を慕う従軍慰安婦の働きかけによるものだった。冷徹そうに見えた大尉が実は、道理の分かる人間だったからということもある。曹長の台詞がイカしてる♪大尉のことを「職業軍人にしては出来が悪い」これ、すなわち、人間としては出来が良いということネ。曹長は敵に奪われた通称「ヤキバ」奪還の命令を受ける。連れていくのは、軍楽隊の少年兵と炊事係の七年兵と葬儀屋と非暴力主義の元通信兵。どうみても、まともに戦えそうにない連中だ。

岡本監督は音楽好きだけあって、その使い方がうまい。緩急つけて挿入してくるから、見ているこちらの心は大きくかき乱される。明日は出発という日、陣地に軍楽隊の「夕焼け小焼け」がゆったりと鳴り響く。長い軍隊生活で荒んだ心に鳴り響く。荒くれ者の心にも、憲兵隊の心にも、従軍慰安婦の心にも、鳴り響く。普段はイガみあっている連中が、「夕焼け小焼け」の音に吸い寄せられるように集まってくる。強がっていても、みんな、故郷の夕焼けが懐かしいのだ。このシーンは構図も音楽も美しく哀しく、そして感動的である。

かくして、曹長は一個小隊を率いて、敵に奪われた通称「ヤキバ」を奪還すべく、出立した。途中、3人のゲリラに遭遇し、二人を射殺、一人を捕虜とする。使いものになる兵士は、荒くれ七年兵のみ。圧倒的に不利な状況下、曹長は緻密な作戦を練り、弱小部下を上手に使い、「ヤキバ」を攻略し成功する。だが、この戦闘で二人の犠牲者を出す。このことが、少年兵の心に変化をもたらした。殺された仲間の仇をうちたい、敵を殺したいという気持ちが芽生える。一度は奪還した「ヤキバ」だったが、ここは攻守の要、八路軍は猛攻撃をしかけてくる。敵も味方も死んでいく。戦場は地獄絵の惨状。次第に少年兵たちの顔からは幼さが消え、精悍な兵士へと変貌していった。だが、圧倒的な物量の差は、如何ともしがたく、防戦一方の戦いが続く。やがて、弾がつきた、援軍は来ない。彼らは武器の代わりに楽器を持ち、敵の攻撃にさらされる。爆撃音と音楽が交錯する戦場。ハーモニーが崩れていくのは、パートを担当している者が次々と死んでいくからだ。そして、音が消えた。軍楽隊は自分たちの葬送曲を演奏しながら全滅した。静まり返った戦場に、葬儀屋が逃がしてやった捕虜が、何ごとか叫びながら駆けてきた。少年兵たちの死に怒り狂った葬儀屋は捕虜を撃ち殺し、彼もまた死ぬ。曹長も七年兵も通信兵も死んだ。カメラは死んだ捕虜の手に握りしめられた紙を写す。そこにかかれていた文字を見た瞬間、私の心は凍てついた。(文面はふせておく)。時、折しも八月十五日。終戦の日に小杉隊は全滅した。救いがない哀しすぎるラスト。戦場の不条理を、岡本喜八流に描いた力作である。私ごときが批評できるレベルの作品ではないので、内容の紹介だけにとどめておきます。

PS:昨晩、NHKの『戦場の軍法会議』を観ました。67年前の悲劇・・・。

タグ : 岡本喜八

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