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2012.07/07(Sat)

肉弾

nikudan_1.jpg


水平線、光る海、無音。カメラが海に漂う何かを捉えた。ドラム缶だ。その下には魚雷が・・・。灼熱の太陽が海を照らす。中から手が出てきて缶のふちを触った。「あちっ」と声が漏れる。波の音も風の音もしないのに、「あちっ」だけ聞こえるというのが、喜八流。引っ込めた手に代わって、番傘が出てきた。ひらかれた傘には「第二あけぼの楼」の文字。んっ?画面は一転し、黒板に日本人の平均寿命が書かれていく。昭和20年 男46.9歳 女49.6歳、 昭和43年 男68.5歳 女72.3歳 ナレーションが「どうして女の方が長生きなのかな、いやまぁ、そんなことはどうでもいい、戦争のあるなしでこうも人間の寿命が違うもんかねぇ。引き算をすれば21.6歳、こりゃ驚いた!偶然かねぇ、アイツ(寺田 農)はあの時、21歳6ヶ月だった。奇妙なオープニングである。

ドラム缶の中で番傘をさしているアイツがつぶやく。「21歳と6ヶ月か、俺、おしまいだなぁ」アイツはいったい誰?ぶ厚いレンズの眼鏡をかけ、日の丸に轟と書かれたハチマキをしめ、缶の底からすくいあげた小魚に喋りかけている。「今年になって、硫黄島だろ、沖縄だろ・・・もう、駄目なんだ」爆撃音にアイツは動じない。「今のはな、広島に落ちた新型爆弾だ、ピカ、ドン、以上終わり」アイツは諦観の中で物理的に生きている。アイツがこんな状況に陥ったかを、振り返る形でストーリーが展開する。

アイツのモデルは岡本監督。「私自身の体験を下敷きにしてフィクションに起こした」と語っている。予備士官学校でのことを映画にしているのだ。飢えや、殴る教官、対戦車特攻訓練を、笑いにすることで、ひそかな楽しみが増え、常時「死」のことを考えることも無くなったと述懐している。「当時の私は、自分の寿命をうまく行って二十三、下手すれば二十一と、大掴みで踏んでいたのだが、刻々と近づく死への恐怖をマジメに考えると、日一日とやりきれなくなって行く。それが高じて、もし発狂でもしたらみっともない。そんなある日、はたと思いついたのだが、自分を取り巻くあらゆる状況を、コトゴトく喜劇風に見るクセをつけちまおう、ということであった。」とも。本作は、その通りの作りとなっている。

演習場。区隊長の「点火~!」の号令に、候補生たちは導火線に火をつけ、その場から走り去る。なんとアイツだけ素っ裸(@_@;)アイツは恥ずかしいと言う感情すら持っていない。火をつける際に用いたすり木を持ちかえることを忘れたアイツを、区隊長がビンタする。何度も何度も。アイツが素っ裸なのは教官に飢えを訴えたからである。激怒した区隊長はアイツを豚と呼ばわり、衣服の着用を禁じた。そうこうするうちに、広島と長崎に原爆が投下された。本土決戦に向け、アイツら候補生たちは対戦車特攻隊の任を受ける。学校長の大佐が言う。「諸氏は、今日より、人ではない神である・・・」まぁ、人から牛、豚になり、再び人間に戻るかと思ったら、今度は神だそうだ。新米の神様たち(幹部候補生)は、たくさんの御供物と24時間の自由時間を与えられる。

アイツはまず、古本屋へ行った。店主(笠智衆)はB29の爆撃で両腕がない。トイレの介添えをして聖書をタダで譲ってもらった。続いて向ったのは、焼け跡に建つ女郎街。雨が降っている。冒頭、アイツがさしていた番傘は女郎屋の傘だったんだ。若い女主人を大谷直子が演じている。両親と5つの妹は空襲で死に、兄は戦死しため、彼女が店を切り廻しているのだ。大谷さんのセーラー服姿が初々しい。彼女の兄はSS艇(一人乗りで爆薬をつめて敵に体当たりする)で死んだ。アイツは爆薬を抱えて敵の戦車に体当たりするお役を仰せつかっている。まず、助からないだろう。アイツと少女は結ばれる。死ぬ理由がほしかったアイツは「オレは死ねる。これで死ねる。オレは、君を守るために死ねる・・・」アイツは国のために死にたくないのだ。どうせ、死ぬのなら、それなりの理由がほしいのだろう。

24時間の休暇を終えたアイツは一人、海岸近くの砂丘にいた。ミカン箱みたいなものを持って走りまわっている。対戦車特攻の練習だ。いよいよ、明日、爆薬を渡されるらしい。砂丘でアイツは戦争で両親を失った兄弟に会う。勤労動員で町の工場へ行っていた兄は幼い弟を心配し帰ってきたのだが、それを教師にとがめられ、竹刀で殴られる。教師も狂っている。日本中が狂っている。その後、死のうとしているオバサンや、赤十字の看護婦や、上半身裸で竹ヤリを構えて海岸線へ走っていく青年たちの群れに出くわす。「進め、一億火の玉だ」狂っている。

B29の来襲。町が燃えている。幼い兄弟の兄も女郎屋の少女も死んだ。アイツは死ぬ理由がなくなってしまった。それでも、軍は死ねと言う。区隊長は「作戦を変更し、SS艇特攻基地へ行って指示をあおげ」と命令した。基地へ行くと、SS艇なんてものはなかった。残っているのは、九三魚雷だけ。それにまたがり、敵に突っ込めということ!かくかくしかじかで、冒頭シーンへ繋がる。アイツは駆逐艦から魚雷と一緒にドボンと落とされ広い海原に浮かんでいたのだ。グラマンの攻撃をやり過ごし、ポッカリ、ポッカリ浮いている。やがて終戦。だが、アイツはそれを知らない。やれやれ、ハッピーエンドかと思いきや、虚をつかれるラストショット・・・。可笑しゅうて、やがて悲しき戦争映画。

タグ : 岡本喜八

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