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2012.11/19(Mon)

愛のメモリー

家族の写真と謎の建物が交錯するオープニングクレジット。十字架が施された謎の建物は何を意味しているのだろう?バックに流れる不穏な音楽が暗示するものは?なりよりも、ブライアン・デ・パルマ監督作というのが一番怖い(笑)。吉と出るか凶と出るか?

ニューオリンズ 1959年。カメラが一軒の家にズームする。「カシャ カシャ」と、写真をスライドさせる音と笑い声。冒頭の写真とリンクしているものと思われる。家の中では実業家マイケル(C・ロバートソン)と、妻エリザベス(G・ビュジョルド)の結婚10周年を祝うパーティーが開かれていた。写真を見終えた友人たちが祝福の拍手を送る。映写室からホールへと場所を移動しダンスパーティが始まった。ズボンに銃をしのばせたウエイターが、にこやかに酒をついでまわる。

マイケルの人生は順風満帆に流れていた。事業の成功で富を築き、美しい妻と愛する娘がいる。しかし、約束された幸せなどないことを、私たちは知ることになる。パーティーの晩に、悲劇は起こった。娘の泣き声を聞いたエリザベスが様子を見にいくと、娘はウエイターに銃を突きつけられ怯えていた。言葉を失い呆然とするエリザベス・・・。マイケルが部屋に入った時には、ふたりの姿は消え、「警察に知らせるな 妻子を取り戻したければ 明日までに50万ドル用意しろ」という脅迫状が残されていた。映画が始まって早々に、犯人が明かされたということは、ウラがあるに違いない。

Obsession.jpgマイケルは警察に届け出た。ブリー警部は「警察にすべて任せてほしい。身代金を払ってはいけない、身代金が入れば人質に何をしでかすか分からない」と言う。マイケルは警部の指示に従い、ニセ札をカバンに詰め発信機を入れたものを犯人に渡す。やがて、監禁場所が判明し、警察は建物を囲んだ。なんで、犯人は中身を確かめずに持ち帰ったのだろう?そうか!ブライアン・デ・パルマが監督しているからだ(爆)。犯人たちは人質を車に押し込み逃走するが、橋の上で車が爆発し川へ転落する。遺体の回収はあきらめざるをえない。マイケルは二人の霊の鎮魂のため、モニュメントを建てた。これがオープニングに出てきた謎の建造物。

時は過ぎ1975年。マイケルはイタリアのフィレンツェを訪れ、エリザベスと出会った教会へ足を踏み入れた。びっくり!墓石はこの教会を模したものだったんだ。教会を仰ぐショットが死の重さとともに神の威厳を伝える。教会の内壁に描かれた荘厳な絵が、この世とあの世が混在するかのような空間を作り出している。マイケルが妻との思い出に浸っているのか、哀しみの中にいるのか、表情からはうかがうことはできない。だが、そのマイケルの目が驚きをもって、一人の女性の姿を捉えた。瞳の中に映る、亡き妻とそっくりの女性は幻なのだろうか?静かなサスペンス劇である。派手さはなくとも、微妙な性格描写や心理描写が「どうなっているんだろう」と観る者に気を持たせ、その意識下の緊張感で場面をはこぶ。

私なりにいろいろと考えてみた。死んだと思われていた妻が生きていた?。いや、それはないだろう。なぜなら、16年も経っているのに彼女は昔のままである。マイケルはサンドラと名乗る女性に心を奪われる。それは妻の面影を求めたからか、新たな恋が芽生えたのか?もし、サンドラを好きになっても、死んだ妻への背徳とはならないと思う。16年前に止まってしまった時間が、また、時を刻み始めただけ。先が読めない展開は楽しく、サンドラへの関心を呼び起こす。もしかしたら、サンドラはエリザベスの娘、つまりマイケルの娘なのでは?と思ったが、サンドラの母親が画面に登場し、私の推理はしぼんでしまった(汗)。

マイケルはサンドラと結婚するつもりでアメリカへ彼女を連れて帰る。周囲は複雑な反応を示した。開かずの間に残されたエリザベスの日記、洋服、宝石・・・ヒッチコック風に話が進んでいく。何かある。鏡の使い方も謎めいていて巧い。精神科医の登場は何を意味するのだろう?「罪悪感や亡き妻への未練で結婚すべきではない」とドクターは忠告する「治療の再開」とも口にした。マイケルは精神を病んでいるのか?一方、サンドラは不可解な行動を始める。マイケルの精神科医には「自分は身代りなのか、悩んでいる」と言ったらしいが、エリザベスの墓石に頬ずりのはなぜ?霊がのり移った?エリザベスの日記を読むうちに同化した?精神科医の言葉はマイケルを追いこむための嘘?そして驚愕のラスト!!!アイツは怪しいと思ったんだ!私の推理はあたらずとも遠からずだった。だが、一番重要なことを見誤った。ストーリーを破たんさせることなく、つじつまを合わせた上で意表をつくラストに持ち込んだ監督の手腕に拍手。この映画、吉とでました。面白かった~!
16:34  |  映画  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2012.10/23(Tue)

ゴーストライター

カメラは一艘の船が港に入ってくる様子を正面から捉える。闇の中、船の明かりが音楽と絡まり威圧的な雰囲気を醸し出す。それに呼応するかのように、フェリーに積まれた車のライトが不気味に光る。どしゃ降りの雨の中を次々に車が上陸していく。一台だけを残して・・・。続いて、荒波が打ち寄せる浜辺の風景が挿入され、観る者の心に不安と疑問を植え付ける。

theghostwriter_1.jpg

画面が一転し、オフィス街で食事をしている男性の会話を拾う。「政治なんて縁がない」声の主はゴーストライター(ユアン・マクレガー)で、食事相手から、元英国首相ラングの自叙伝の出版話を持ちかけられての返答だ。気乗りせぬまま、出版社へ行き面接を受けたところ、「仕事が速いこと」が評価され、仕事を任されることになった。米国で公演中のアダムに会いに行き、1ヶ月で原稿を仕上げろと指示される。すでに初稿があり、それを手直しするだけのこと、ゴーストライターにとって、困難な仕事ではない。深く考えずに引き受けてはみたものの、気がかりなことがあった。初稿を書いた人間は事故死(自殺?)していると言う。初稿は門外不出の状態でアダムの滞在先に保管されていた。何かある!担当者からゴーストライターに渡された参考資料が暴漢に奪われたのは、それが初稿だと思われたからであろう。ここで、ヤバイ仕事だということに気づくべきだった。25万ドルという破格の報酬も危険のサイン。あっ、それじゃ映画にならないか(笑)。

出発を待つゴーストライターの視線の先のテレビでは、ラング前首相の違法行為疑惑を伝えるニュースが流れていた。「英国特殊部隊を勝手に動かしアルカイダの容疑者4人を捕獲、CIAに引き渡した。」映画はきな臭さを発散させながら進んでいく。前首相はアメリカのとある島に滞在しており、そこへたどり着くには飛行機とフェリーの乗り継がねばならない。長い長い旅だ。船内には「1月12日に死亡死亡事件 目撃者を求む」というボードが掲げられていた。と、ここまでが、伏線が張り巡らされた導入部である。監督はロマン・ポランスキー。本作は『チャイナタウン』(74)とテイストが似ている。同じ監督が手掛けたものだから、そう感じるのかもしれない。もっとも、『チャイナタウン』は1930年代を、『ゴーストライター』は今を扱っているのだから、小道具やファッションを見る限り隔世の感はある。しかしながら、登場人物の相関や、映画の幕切れは『チャイナタウン』とほぼ同じだ。時代を現代にスライドさせて描いた本作が『チャイナタウン』と同様の高い評価を得たことは、ポランスキー監督が、今も高いポテンシャルを保っているからに他ならない。

ポランスキー監督の代表作と言われているものは、だいたい観ている。数々の名作を世に送っているが、私は『ローズマリーの赤ちゃん』が一番好き。我がジャックの『チャイナタウン』は2番目かな(汗)。最新作『おとなのけんか』(11)は未見なので、wowowで放送されれば観なければ!これは劇場に行くつもりだったのだが、なんとなく行きそびれてしまった。正直に言うと、『おとなのけんか』の監督がロマンスキーだと知らなかった(汗)。

theghostwriter_2.jpg

前首相を演じているのは『007シリーズ』のピアース・ブロスナン。過去に秘密がありそうなのだが、そのヤワな風貌は巨悪のイメージとは遠くかけ離れており、彼を裏で操る人物の存在を、ちらつかせている。はて、それが誰なのか?このような場合、怪しそうに見えない・・・つまり、ゴーストライターの味方っぽい人物が真のワルであることが多い。「鳶の油揚げをさらわれる」ような展開にはならないだろうから、だいたいの察しはつく。後は事件の背景だ。起こったことを羅列する。前首相の自叙伝を執筆中のライターが殺された。その後任は政治に無関心なゴーストライターが選ばれた。彼は前任者の持ち物に隠されていた意味深な写真を見つけたために、ミステリアスな事件に巻き込まれた。前首相は、国際刑事裁判所から戦犯の疑いをかけられた。前首相夫人がゴーストライターを誘惑した。ゴーストライターは、前任者の足跡を追い、CIAが一連の事件に関わっていることを知った。そして命をねらわれた・・・となる。ポランスキー監督は、これらの出来事を確かな計算によって組み立て、緊張感をフィルム全域にゆきわたらせている。スリルとサスペンスの盛り上げ方に隙がないのが、百戦錬磨のポランスキー監督らしい。ラストの負の余韻が後を引く。
16:02  |  映画  |  TB(1)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2012.10/05(Fri)

プリースト

バンパイアとの戦いで荒廃した未来、人類は高い壁に囲まれた城塞都市で修道会の支配のもとに暮らしていた。ある日、修道会の戦士《プリースト》の一員である男のもとに、兄の家族がバンパイアに襲われ、幼い姪がさらわれたとの知らせが届く。プリーストは、安全なはずの都市に再びバンパイアの脅威が訪れたことを訴えるが、修道会は聞く耳を持たない。プリーストは姪を救うため、やむなく掟を破って都市の外へと旅立つが……。(wowowより)

Priest.jpg

本作を面白いと思った方、ごめんなさい。私、全然ダメでした。あまりにも、つまらなかったので、記念に記事にしておきます 冒頭の汚らしいアニメは何?センスないなぁ。説明的なナレーションや字幕で始まるのさえ、イヤなのに、これは酷い トーンも暗すぎて個体識別不能。テレビの色調を目一杯明るくして、やっと描かれているモノの輪郭がわかった。スクリーンだと、重厚な感じなのかしらん?プリーストとは、バンパイアと戦う修道会の戦士なんだとさ ナレーションでは兵器と紹介しているけど人間らしい。まず、この設定が気に入らない(汗)。集団で戦う修道士という発想が野蛮。比叡山の僧兵みたいなもの?顔の十字架はタトゥ?ペイント?あざ?シール?未来の話だそうだが、荒廃しすぎていて年代不詳の感じがする。最初に出てきた一家は、西部開拓民みたいだ。時代錯誤では?と思っていたら、唐突に電車が出てきて、ガード下を番傘をさした人々がうろついている。支離滅裂だよー、HELP!制作者の意図がわからない。

教会らしき場所でプリーストがパソコン画面に告解している。なんじゃい!薄気味悪いなぁ。声紋を照合させて、上司を呼び出し、打ち明け話を始めた。テレビ電話で未来感を出すというのが安直。発想の貧弱さに加えて、無意味な暴力シーンのオンパレードで、気分が悪くなった。ストーリーを構成している各要素は、どれも見たことがあるようなものばかりで新鮮味に欠ける。今時、列車の屋根での格闘って(笑)。それに、バンパイアと称しているものは汚いバケモノではないか。バンパイアに失礼だぞ(苦笑)。かのロジャー・コーマン先生も真っ青のチープな映画。

おわび:作品を罵倒するのは好きではないのですけど、ついつい書いてしまいました。素人のたわごとです。お許しを
14:50  |  映画  |  TB(1)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2012.10/01(Mon)

淑女と髭

昭和六年に公開されたサイレント作品。この映画は超面白い!!!フィルムが残っている奇跡に感謝。原作と脚色は北村小松氏、撮影は茂原英雄氏、撮影補助は厚田雄治(雄春)氏。ギャグマンとしてヂェームス槇の名がクレジットされている。ヂェームス槇は小津さんのペンネームである。

冒頭の剣道の試合が、まず可笑しい。しょっぱなから、ギャグの一斉射撃をあびせかけてくる。岡嶋(岡田時彦)が面を取ったと大げさにアピールするも、審判に認められず、試合は続行。すると、対戦相手はタイムをかけ、入れ歯をはずし、仲間に不具合を訴えている(笑)。貴賓席の宮様らしき少年(突貫小僧)は、シャボン玉を飛ばして遊んでいる。この時代に、皇族を茶化した映像が、よく検閲を通ったなぁ。ほんの数秒の描写だから、大目に見てくれたのだろうか、それとも見逃した?ナンセンスな世界ではなんでもあり?徹底的にふざけた痛快さがある。

試合はフェイントをかけた岡島が勝った。相手方は大将(斎藤達雄)が登場する。ソンキョの姿勢をとって、いざ試合!んっ?なんか変だ。やだ~、大将さん、面を被るのを忘れてるじゃありませんか(笑)。またまた、試合は中断。息詰まる勝負じゃなくて、行き詰まった試合ですな。ハプニングの後、互いにフェイントをかけ合う珍試合の末、岡嶋が勝利をおさめる。やおら面をとると、たいそう立派な髭がお出ましになった。まるで、原始人だ。髭の中に顔があるという感じかな。

hige.jpg

試合を見にきていた岡嶋の友人で、男爵家の行本(月田一郎)は、妹・幾子(飯塚敏子)の誕生日会に彼を招待する。岡嶋は己の考えるところの正装で男爵家へ向う。紋付羽織袴に学生棒帽を被り、下駄を履き、手にはステッキを持っている。途中、不良女モガ(伊達里子)に絡まれている広子(川崎弘子)を助けた。これに腹を立てたモガは、子分らしき二人の男に、岡嶋を襲わせたが、岡嶋のステッキが彼らを叩きのめす。竹刀をステッキに持ち替えての、再度の大立ち回り・・・岡嶋は戦う人なのだ。立ち去る岡嶋の背中にモガは怒りの言葉を吐く。「おぼえてやがれ!髭ッ面!!」岡嶋は、せせら笑いを浮かべて言い返した。「忘れよったって お前さんのその不格好な洋装は忘れられんよ!」まぁ、服装のセンスの問題でしょうが、私は岡嶋の装いの方が変だと思いますけどね。

カメラが行本家の内部を写す。調度品の豪華なこと!丸テーブルに背もたれの高いチェア、天井にはシャンデリア、ゴルフクラ壁にはゴルフクラブが無造作に立てかけられている。執事(坂本武)が岡嶋の来訪を告げると、行本の妹の顔が曇った。「お兄さんってば 又あの髭ッ面つれて来たの?帰して頂戴!あんな時代おくれ 大きらい!」アハハ、ここでも、髭ッ面と言われてる。この男、そう言われても仕方ないのかも。だって、ケーキを両手に鷲掴みして食べ、剣舞を舞い、妹とその友達を怖がらせるのだから。乙女を前で真剣を振り回したら、そりゃドン引きされますよ。この滑稽な舞いは誰が振り付けしたのだろう?撮影現場のノリが伝わってくる。失礼は承知の上で申し上げる。馬鹿だなぁ(笑)。

字幕が入る。「お~髭よ!!髭も岡嶋が学校を出ると共に社会に出なければならなかった」って、髭は岡嶋と運命共同体なの?(笑)。髭ッ面のまま面接を受けにいくと、その会社には偶然にも、先日、岡島が助けた広子がいて、彼を社長室に通した。今日の岡嶋さんはスーツを着ている。顔をあげた社長が、岡嶋の髭を見てたじろぐ。なぜなら、彼もまた、髭ッ面だったのだ。ただし、岡嶋のそれと比較すると、社長のは貧相である。互いにバツが悪そう。ふたりの動きがシンクロする。岡嶋と髭は不合格となった。広子の助言で、岡嶋は髭を剃る。

岡嶋に寄生(?)していた髭がいなくなると、端正な顔が姿を現す。憑き物が取れたとは、このことを言うのだろうか(笑)。岡嶋が髭を剃らなかったのは、リンカーンの影響にされてのことだった。岡嶋の髭はリンカーンを模したものである。髭は女よけのお守りなんだそうだ。笑っちゃう言い分だけど、これは当たっていた。髭を落とした途端、岡嶋はモテモテ男になる。つまり、もともと岡嶋は美男子で、髭が彼の素顔を覆っていたのだ。

Lincoln.jpg
リンカーン

場所は変わって行本男爵家。兄が妹の幾子に歴代の偉人の写真を見せている。どの顔にも立派な髭が(笑)。これだけでは、説得できないと思ったのか、さらに、お金を取り出す。一円札、十円札、五円札、どの肖像も立派な髭をたくわえている。兄曰く「大蔵省だって かくの如く髭を奨励している」(爆)。妹の髭嫌いを直そうと、必死の兄。でも、そんな理屈が通るはずもない。そこへ、髭をおとし、美男子に生まれ変わった岡嶋がやってきて、ホテルに就職が決まったことを報告する。妹の表情が変わった。微笑んでいるではないか!ハイ、幾子さん、惚れてしまいました。岡嶋にホの字なのは、幾子だけではない。あの不良娘のモガも、そして広子も岡嶋に心を奪われいる。男も顔ね。リンカーンの魔除け説が真実味をおびる。ただし、広子は髭の存在の有無に関係なく、岡嶋を好きになったようだ。湯飲みを髭に見立て、自分の口にくっつける仕草が可愛い。

goenntakenouchi.jpg

本作は全シーンがギャグによって構成されており、どこを切り取ってもショートコントになりうる。岡嶋が久子の家を訪ね、部屋にあがる際、股引を伸ばして靴下に見せかけるのも可笑しいし、男爵令嬢の幾子と見合い相手が、ふられたショックから、彼女に襲いかかるシーンも愉快だ。騒ぎを聞きつけた母親が息子に「何という失礼なことをなさるんです!直接行動や暴力行為は上流のする事ですか!!」と、叱りつけた。目一杯気取っていた、上流のお坊ちゃまが、我を忘れていく様子を数コマに収める妙技に感心しましたですよ。果たして、誰が岡嶋のハートを射止めるのでしょうか?この映画の面白さを語り出したら止まらなくなるので、この変でやめておきます。最後の字幕がふるっている。「剃っても剃っても 生えるのは髭であるーアブラハム リンカーン」

タグ : 小津安二郎

12:20  |  映画  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2012.09/12(Wed)

最強のふたり

アース・ウィンド&ファイアーの曲が流れる。懐かしいなぁ。ディスコブーム全盛の頃、ミラーボールとともに煌めいていた音楽である。その軽快なノリに合わせて、パリの街を疾走する一台の車。若い黒人運転手と助手席の中年の白人男性はゴキゲンだ。ふたりの快適なドライブは、少々、ハメを外していたのかもしれない(汗)。いつのまにやら、パトカーとのデッドヒートに。パトカーの制止をふりきり、アクセルを踏み込んだ運転手が賭けの話を始めた。先導するとかしないとか・・・。

Intouchables_3.jpg

2台のパトカーが行く手を阻んだ。普通ならここで、「クソッ」とか言いそうなのに、ふたりは笑っている。警察官の指示に従い、黒人運転手が外へ出てボンネットに手をついた。警官が助手席の白人男性も外に出るよう促すと、運転手は険しい表情になり「出たくても、出れないんだ!後部座席を見ろ、車イスがあるだろ!」と、まくしたてた。警官が助手席を覗くと、白人男性が痙攣の発作をおこし口から泡をふいているではないか?!うろたえる警官に「俺が好きでスピードを出していたと思うのか、病院へ急いでるんだ!」。ふたりは警官に先導され、病院へと向った。賭けにかったのは黒人運転手ドリス(オマール・シー)、貧民街で育ったアフリカ系フランス人だ。彼の雇い主フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は大金持ちだが、首から下が麻痺している障がい者である。軽快なオープニングに暗さは見受けられない。

ところが、重厚なクラシック音楽が映画のトーンをお上品にし、オープニング・シーンに至るまでが、フラッシュバックで描き出されていく。豪華な屋敷の廊下には、家主フィリップとの面接を待つ神妙な顔が並んでいる。面接を秘書らしき女性に任せ、フィリップは冷めた目でその様子を眺めているだけ。心あらず・・・という感じか。麻痺はパラグライデーの事故によるものだった。一瞬にして体の自由を奪われてしまったフィリップ。心は闇の中を彷徨いつつ、自分の境遇を嘆き悲しみ、全ての事を諦めてしまったのかもしれない。そんな彼が、遅れて面接を受けにきた黒人男性に、少しだけ興味を示した。なぜなら、他と違っていたから。ラフな格好をした粗暴な青年はロクに挨拶もしないで「ダメだろ、さっさと不合格のサインをくれ」と、急かす。フランスでは3社の面接に落ちれば生活保障を受けることができるらしい。フィリップは「サインしておくから明日、取りに来るように」と告げた。翌日、トリスが受け取ったサインには「採用」の文字が(笑)。得体の知れない黒人青年を雇うことになったのに、他の使用人は気にする風がない。どうせ、長続きしないと思っているのだ。何人もが止めたということは、フィリップに問題があるのかな。さてさて、問題児同士、どうなることやら(笑)。

ドリスにしてみれば、好き好んで選ばれたわけではないので、フィリップに取り入るようなマネはしない。それに、ドリスは無知というか無垢な男だから、同情ということを知らず、たとえ相手が身障者であろうが、遠慮のない物言いをする。時には、鳴っている携帯を、そのままフィリップにさし出し「あっ、手が動かないんだったな」と、笑っている。このドリスの奔放な態度がフィリップを喜ばせた。頑な心が徐々にほぐれていき、ふたりは対等な関係を構築しつつあった。

Intouchables_1.jpg

ドリスは高貴で傲慢な雇い主フィリップを、どんどんと自分の世界へと引き込む。車イスを改良しスピード感のある乗りモノにしたり、ダンス・ミュージックを屋敷に響き渡らせたり、スポーツカーで街をぶっ飛ばしたり、おしゃれな服を着せたり、女性の扱い方の講義をおこなったり・・・・。どれもがフィリップには新鮮だった。

Intouchables_2.jpg

ドリスはフィリップを通して上流社会を覗く。オペラやクラッシックの演奏会や自家用ジェットやパラグライダーを大いに楽しむドリス。普通だったら、委縮してしまうだろうが、彼は周りの視線など、全く気にせず、いつでもマイペースだ。ドリスとフィリップは互いの世界に足を踏み入れることによって、新しい発見を重ねる。劇的な要素はない。ふたりの触れ合いを描いているだけの友情物語である。

全く違う種類の人間が出会って心を通わせる・・・なんと素晴らしいことだろう。価値観は違っても、響き合うものがあったのだと思う。フィリップはお金はあるが体の自由がない。明るそうなドリスは、複雑な家庭環境の中で育ち、密かに抱えた心の重みに苦しみながら歩んできた。社会的弱者のふたりは支え合いの中から尊さを見つけ、後ろ向きな人生からの脱却を図る。陽と陰が交わりながら進むストーリーが静かな感動を呼ぶ。上映中はユーモラスなシーンに笑い声が起こっていたが、エンドロールが流れる頃には、すすり泣きの声が漏れていた。観る者にしんみりとした感慨を残す映画である。

タグ : フランス映画

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